第二章 始まり(Like a Love Comedy)

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「おはよう! 拓海君」  こんな早朝から高いテンションで俺に接してくる人間は少ない。 「桜か。おはよ」  右隣にいる雪に対して、桜の席は左隣だ。 「雪さんも、おはよう」 「……おはよう」  俺の方を見ていた雪はちらりと桜に視線を移す。 「今日は二人で登校なんだね。どうして?」  いきなり答え辛いところを聞いてくる。  どうすれば怪我を負わずにこの場を切り抜けられるだろうかと考えていると、意外な事に雪が話し出した。 「昨日私が拓海の家に泊まむぐ」  不穏な台詞を吐きそうな雪の口をガバ!! と塞いだ。  いきなり何言い出すんだ! こいつ。  ? と雪と桜は状況が飲み込めていないようで、二人して訝しげな表情だった。 「そ、それはほら! 家が近くだからな!」  なんとか取り繕うが、桜はまだ納得しきれていないようだ。 「ふーん……」  返ってくるのは曖昧な返事だ。
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