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「これはどういうこと~!?」
時刻は午後五時を過ぎたばかり。夏が近づいてきているからか、まだドームの天井の内側に写された空の橙色は薄い。
そんな哀愁を誘う日差しが差し込む学校の、とある教室の一室。
聞いている方が脱力するような、間延びした声で桜が叫んだ。
自らの名を表すかのように、薄い赤色をした髪を肩甲骨程まで伸ばしている。
幼さを残しながらも端正な顔立ちで、笑顔がよく似合う。というより、いつも笑顔の絶えない少女のように思える。記憶を探れば、彼女はいつも笑っていた。
しかし今、俺の前に立つ桜はそんな記憶が間違いだったのではと思える程に、怖い。
桜の視線の先には、如月拓海こと俺と、この《シティ7》の領主の一人娘、降谷雪がいた。
放課後の教室に残っている生徒はこの三人だけだ。
「どういうことと言われてもな……お前説明する気あるか?」
「……ない」
一瞬の間をおいて雪が答えた。
いや、間隔こそ空いてはいたが、その声には『わざわざ言わなくても分かるだろう、バカ』という意味が含まれていた。
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