第一章 放課後(The Boy and The Girl)

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 少なくとも、俺にはそう聞こえた。心外だ。  ハァ……。  面倒なことは俺に任せるって訳だな。そうかい。  仕方ない。答えるとするか。   ……とも思ったが、俺には一体どこまで言っていいのかがわからない。  そもそも他人においそれと話してもいい事なのだろうか?  降谷雪(ふるたに ゆき)。  月卿と呼ばれる領主の一人娘。  灰色を更に薄くしたような白い髪に、俺と頭一つ以上違う小さな体、夏も近づくこの季節など全く無視した真っ赤なロングマフラーを首にグルグル巻いている。  顔の作りははっきり言ってかなり可愛い。  その名の通り、雪のように白い肌。  しかし感情を表情に出すことはほとんどなく、無愛想、いや無表情な少女である。  彼女は自分が持っている、とある力──それを利用しようとした人々が行なった実験の副作用──の為に、心を失いかけた。  研究を行なっていた者が果たしてその副作用に気付いていたのかどうかは、俺には分からない。  でも、例え分かっていたとして、それを重要なことだとはきっと思っていなかっただろう。  研究自体はとても高尚で、今後の人々の生活を劇的に変え、後世に名を残すようなものだったらしいのだか。
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