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名をミヅキ・エナ、もしくはカナと名乗った彼女は、自身の存在を影だと口にした。 自身は魔を識り過ぎ、更には叶えたい事柄があり、自身の全てと引き換えにこう成り果てた、と。 恐らくは事実なのだろう、と思う。 彼女の存在は幻影と表現するには濃密過ぎ、実像というには淡泊過ぎた。 使い魔や依り代を核に自身を形成するには莫大な労力が必要で、本体とのズレ等の歪みや能力の上限を取り除くためには更に様々な対価を払わねばならない、なんとも効率の悪い代物なのだ。 そんな不都合や欠点を承知の上で行使する輩もいるとは聞くが、目の前にいる存在程に完成されたそれを造り上げる存在を、この室の主たる彼女は未だに見た事は無かった。 まあ、そもそもこの室から滅多に出ない彼女に、出会いの機会など滅多に無いのだが。
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