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そういえば、と。
以前外に出た際に会った女性はどうしているだろうか、と彼女は思う。ケーサツとかいう治安維持武装集団に捕まっていないといいが。
確か名前は、と思いを巡らす彼女の頭に、
「っ」
ばこっ、と。
「もう、聞いてるかいこの野郎」
蔵書の中でも比較的分厚い書物の裏表紙が、無慈悲な速度と重量をもって、情け容赦無く激突した。
彼女の頸椎が嫌な音を立て、視界に火花が散る。
「っ、っぅ……っ!」
頭を押さえてうずくまる彼女の頭頂からかけられる言葉は至って無邪気なもの。
「もー、せっかくゆーくんのお兄さんの新しい彼女さんについて話してたのにさあ」
あまりに無邪気な口調に怒りすら覚えるも、生憎とそれを表現する余裕は彼女に与えられない。
「ちょっと元気無いけど美人さんなんだよ?ゆーくんとくっつけばいいのにさー?」
ああいうのをオクユカシーって言うんだろうね、とそれ。
なんだオクユカシーって。そもそもユークンって誰だ。
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