一握の温もりに身を寄せて

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目が覚めるか覚めないかのほんの少しの合間 額に感じたトクトクという鼓動に少し驚いて でもそれが、何よりも誰よりも近しい彼のものだと思い出して…なんだかくすぐったいような、暖かい気持ちになった。 ゆっくりと、彼を起こさないように起き上がろうとすれば 私の右手に絡められた彼の指 それが、昨日のことが夢じゃないということの証 時計を見た。 ……朝の9時半。 今日は日曜日だから、こんな遅い朝を迎えても問題ないはず… 私が起きたことにも気づかずスースーと寝息を立てているコーヘイは、起きている時とはまるで違う印象で 目の前の彼が昨日はあんな大勢の観客に囲まれながら歌っていたなんて…なんだか不思議だ。 ゆっくりと、空いている方の手で彼の前髪に触れた。 顔にかざっていた少し長めのサラサラした髪をどかせば、息を飲むくらい整った顔が現れる。 閉じられた瞼に、いつ見ても長いと感じる睫毛 スッと通った高い鼻筋と、少しだけふっくらとした唇。 シミひとつない肌と…少し、頬がこけたように感じるのは、文化祭準備が多忙を極めていたせいだろうか… それでも、『完璧』と言って間違いないその寝顔にしばらく見惚れてから…私は細心の注意を払って彼のベッドから降りた。
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