十字路の墓

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事の発端は、十日程前に遡る。 その日、少年は夕方頃まで畑仕事の手伝いをしていた。 そして、畑仕事を終えて帰宅する途中で奇妙な音を聞いたのだと言う。 それが、“地の底から響く”“豚が残飯をあさる様な”音だ。 怪訝に思った少年は、しばらく辺りを調べてみたが、怪しいものは特に何もない。 訝しみながらも帰宅して、家族にその話をしてみた所、父親が自分も見に行くと言うので二人で調べに戻ったのだそうだ。 しかし、やはり何も無かったと言う。 それどころか、肝心の怪しい音も、最初に一度聞いたきり二度と聞こえて来なかったと言う。 結局、少年の聞き間違いだろうと結論して、帰宅した。 ところが、異変はその夜に起こった。 少年の妹が、突然苦しみだしたのだ。 奇声をあげて大声で喚き、手足をよじって奇妙な姿勢を取り、もがいた。 その力は凄まじく、姿勢を戻してやろうとして男二人がかりで手足をひっぱっても、全くビクともしなかったと言う。 娘の力で出来る事とは、到底思えない。 更に、彼女は喉の違和感と息苦しさを訴え、何度も“床の上で溺れかけた”のだそうだ。
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