十字路の墓

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どう見ても娘の様子は尋常ではなく、到底家族の手に負えるものではなかった。 直ぐ様、医者が呼ばれた。 しかし、その医者にも、娘の異変の原因は分からなかった。 分からないなりに手を尽してみたところ、とりあえず状態を落ち着かせる事は出来た。 しかし、今でも殆ど毎晩、“異変”が訪れるのだと言う。 その状態が二日程続き、今度は隣接する家の子供に“異変”が現れた。 その翌日にはさらに隣、また次の日にはさらに隣と“異変”は広がっていき、今では十件以上の家で被害が出ている。 しかも、最初の娘は今でも回復の兆しが見えないどころか、その原因の手掛りさえも掴めない状態であると言う。 ここに至って、最初の娘の父親は、息子が聞いたという物音に注目した。 それは、“地の底から響く”“豚が残飯をあさる様な”音である。 言い伝えによれば、それは墓の下で亡霊が、自らの死体の肉をすする音なのだと言う。 つまり、亡霊の目覚めを告げる音なのだ。
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