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墓地でもないこの辺りに墓がある人物は限られている。と、言うより、ここ数十年では一人だけだ。
つまり、一月前に自殺した、コニー・クリステンセンである。
彼女は自殺者で、しかも生前は一人で森に住み、魔女なのではないかと噂を立てられた事もある人物だ。
彼女ならば、亡霊になる事も十分に考えられる。
息子の話は聞き間違いなどではなく、本当に亡霊が目覚めたのではないか?
そう考えた父親が教会の戸を叩いたのが、今日の午前の事である。
私は彼の話を聞き、彼の家に行って少女の様子を見、少年の案内でこの十字路まで来たのである。
父親は、家で娘についている。私が訪れている間に、“異変”が現れたのだ。
「あ~……」
私は少年に呼び掛けようとして口ごもった。
少年の名前を知らないからだ。
まあ良い。呼び掛けなど『君』で事足りる。
「──君。君、本当に聞いたんですか?」
「本当ですって。何度も言ってるじゃないですか」
「しかし、この辺りには豚なんて居ませんよ」
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