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「当たり前じゃないですか」
少年は目を剥いて、『何を言ってるんだ、こいつは?』という顔をした。
「きっと亡霊の声なんですよ、あれは。だからキルケゴールさんに来てもらったんです」
「亡霊ねぇ……」
私も『何を言ってるんだ、お前は?』という顔をしたかったが、自重した。
「亡霊なんかが、本当に居ますかね?」
「祭司様が何を言ってるんですか?しっかりして下さいよ」
お前こそ何を言っている。しっかりしろ。
私は内心毒づいた。
だいたい、こいつは私の説教やら法話やらを聞いていないのか?私がいつ、亡霊の話をしたと言うのだ。
神の教えに、亡霊など存在しないのだ。
亡霊が現れるのは、古くさい迷信の中の話だ。
だから、教会の祭司に亡霊退治を頼むのはお門違いなのだ。
そんな事は、まじない師か魔女にでも頼むが良い。
神への信仰が薄い事には眼を瞑るにしても、それならそれでこういう時ばかり教会に頼ってくるのはいかがなものだろうか。
私は、そういった内心の苛立ちを隠して、努めて平静を装いながら言った。
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