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「それは、お父上が?」
「ええ。親父もそう言ってました」
「ふうむ……」
困ったものだ。親子揃って、説教など聞いていないらしい。
「お願いしますよ」
少年はすがるような目で、私を見上げた。
「しかし、お払いと言っても、何の準備もして来ていませんからね。ここは一度……おや?」
そこで私は、少年の肩越しに人影を見付け、言葉を止めた。
少年も私の視線を追って振り返る。
東の街道から、一人の男が近付いてくる。
遠目には年齢は分からないが、背筋は伸び、動作は機敏だ。
灰色に煤けた外套をはおり、背には大きな袋を担いでいる。
見ているうちに、男はあっという間に目の前にまで近付いて来た。
「やあ。村の人ですか?」
男は左手を指しながら言った。
近付いて見ると、かなりの長身である。
頬は痩け、髪も無精髭も伸び放題で、顔を見ても年齢はよく分からない。
声の様子からして、40代だろうか?
「ええ、そうです。……あなたは?」
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