7人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「それで、その短刀というのは?」
「え?」
「どんな短刀だった?」
妙な事を聞く。
「どんなって……細身の刃に変わった紋様が入った刀でした。柄にも飾りがあって……あれは、家に伝わる守り刀か何かだと思いますが」
「……ほう。その短刀なら俺も見た事がある。で、その短刀は今は婆さんと一緒に墓の下、か?」
「……ええ」
「“罪の証”だな」
“罪の証”。それはこの地方に伝わる風習で、自殺者は自らの命を絶った凶器と共に埋葬される。
あの世で、自らの罪を天なる父に報告するためだ。
犯した罪は、死後も赦されないのか。
私は、この風習は嫌いだ。
「……しかし、困ったな」
男は言う。
「婆さんが死んだんじゃあ、ここまで来た意味がない。身寄りも無かった筈だから……ああ、遺品なんかはどうなってる?」
「そのままです」
「ふうむ……」
男は腕を組んだ。
「どうしたものかな」
すかさず、私は提案した。
「どうです?後の事はまた考えるとして、今夜は村に泊まりませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!