十字路の墓

18/19
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「それで、その短刀というのは?」 「え?」 「どんな短刀だった?」 妙な事を聞く。 「どんなって……細身の刃に変わった紋様が入った刀でした。柄にも飾りがあって……あれは、家に伝わる守り刀か何かだと思いますが」 「……ほう。その短刀なら俺も見た事がある。で、その短刀は今は婆さんと一緒に墓の下、か?」 「……ええ」 「“罪の証”だな」 “罪の証”。それはこの地方に伝わる風習で、自殺者は自らの命を絶った凶器と共に埋葬される。 あの世で、自らの罪を天なる父に報告するためだ。 犯した罪は、死後も赦されないのか。 私は、この風習は嫌いだ。 「……しかし、困ったな」 男は言う。 「婆さんが死んだんじゃあ、ここまで来た意味がない。身寄りも無かった筈だから……ああ、遺品なんかはどうなってる?」 「そのままです」 「ふうむ……」 男は腕を組んだ。 「どうしたものかな」 すかさず、私は提案した。 「どうです?後の事はまた考えるとして、今夜は村に泊まりませんか?」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!