亡霊

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窓から陽が差し込み、外では小鳥のさえずる声が聞こえる。 ついに、一睡もしないうちに夜が明けてしまった。 こんな事は、随分久しぶりの事である。 重い疲労感と、微かな空腹感に溜め息をつく。 不思議と眠気は無い。 きっかけは、夕食後に交した雑談だった。 私は、エルゲルニスと名乗るあの男に、旅の路銀はどうしているのかと尋ねたのだ。 各地の大学を渡り歩いて学ぶには、多くの金銭が必要になる。 学問そのものにかかる費用の他にも、宿代や食費など、旅を続けるための費用も必要になるから、それは大層な額である。 一方で、当然ながら大多数の学生達は収入源を持っていない。 故郷などからの支援があれば話は別だが、そんな学生は少数である。 つまり、大多数の学生はいずれ路銀が尽きる事になる。 路銀が尽きれば、旅を続ける事は出来ない。 そうなる前に故郷に帰る者もいるが、中には、万引きや置き引き、かっぱらいなどといった手段で食糧や金を得て旅を続ける者もいる。 呆れた事に、年端もいかぬ子供をひき連れて旅をし、彼等にそういった行為をさせる者もいると聞く。
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