亡霊

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エルゲルニスは、私の質問に口の端を吊り上げて応えた。 「それは、俺がこそ泥の真似事をしないかという心配かな?その心配は無用だ。俺には芸がある」 「芸?」 「ああ。占いとまじないだ。町中なら占いで稼げるし、田舎なら家畜にまじないをかけてやれば一晩くらいは泊めて貰える」 私は、絶句した。 ここは教会である。 神の家だ。 占いも、まじないも、神の教えで禁じられているのだ。 そんな場所で口にするには、あまりに問題のある発言である。 私がそう言うと、彼は 「気にする事はない。ここには不良祭司しかいないから」 と答えた。 聞き捨てならない。 「私が不良祭司だと?」 「そうだろう」 「理由を聞かせて貰いましょうか」 「今あんたは何と言った?」 「え?」 「『ここは教会だから』と言わなかったか?」 「ええ」 確かに、そう言った。 「あんた方の教えでは、まじないや占いは神に反逆する行為ではなかったのかな?敬虔な祭司なら、それこそ、『まじない師は地獄へ堕ちるぞ』くらいの事は言うだろうな。ところが、あんたは『ここは教会だから』だ」
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