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自殺者は教会の墓には入れられない。
それは、自殺は人に生を与えた神への反逆であり、冒涜だからだ。
自殺者は、地獄へ堕ちる事が運命づけられている。
ならば、彼女はこの世で苦しみ、あの世でもまた苦しめられる事になるのだろうか。
もしそうならば、あの世など無い方が良い。
私はそう思った。
そうして歩いていると、後ろから墓掘りの男達が追い付いてきた。
「待ってくださいよ、キルケゴールさん」
誰が待つか。
「キルケゴールさん」
男の一人が、私の隣に並んだ。
「今日は、随分とまた、馬鹿丁寧なお祈りでしたね」
男は人を小馬鹿にしたような調子で言った。
「何がですか?」
私は、目一杯愚かに見えるように答えた。
「あの婆さんは自殺したんですよ。どんなに祈ったって、どっちみち地獄行きだ」
「──ああ」
私は、『今気付いた』という顔をしてやった。
「そうでしたね。確かに、そうでした。しかし、彼女を悼む者が居ないのは、あまりにも憐れではありませんか?」
「へえ。じゃあ、あんたは自殺者に同情したってんですか?たいした祭司様だ。そりゃ、神への冒涜じゃないですか」
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