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お前の様な人間が神を語る事の方が、余程冒涜的だ。
私は、思った。
この男は、人を辱めるために神の名を使っているだけなのだ。
この男に、信仰などありはしない。
私は、男の顔を見返した。
男は薄ら笑いを浮かべている。
言ってやろうか?
お前の方が神を冒涜している。お前は敬虔に信仰しているつもりかも知れないが、実の所、お前は信仰というものが全く分かっていない。お前などに神は微笑まない。憐れなやつだ、と。
それも良いかも知れない。
寧ろ言うべきだろう。
言って、分からせるべきだ。
そうも思う。
だが、……
突然の轟音。
雷が落ちたのだ。
空を見上げると、顔に冷たいものが降りかかってきた。
雨だ。
「ちっ、降ってきやがった」
男はそう言うと、小走りに走り出した。
後ろにいた他の男達も、次々と私を追い抜いていく。
「急げ」
「くそっ、降るならもう少し後にしろよな」
口々に悪態をつきながら。
「あんたも、急ぎなよ」
一人が私を振り返って言った。
「ええ。分かってますよ」
私がそう答えると、男は頷いて走り去っていった。
雨足が強まった。
私は大きく息をついた。
雨の臭いに混じって、微かに土が薫った。
降りしきる雨の中、しばらく私は空を見上げていた。
そうしたい気分だったのだ。
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