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時は移ろい、過ぎ去っていく。
コニー・クリステンセンの葬儀から一月半が経ったある日、私は再び村外れの十字路に立っていた。
十字路の真ん中に立って、辺りを見渡す。
東西に伸びる道路は、それぞれが遥か遠く、山や平野を越えた先の他の村まで続いている。
北は深い森へと続き、その森を抜ければ隣国との国境にたどり着く。コニー・クリステンセンの住んでいた小屋も、この森の中にある。
そして背後、つまり南ヘ向かえば我々の村だ。
耳を澄ませてみた。
吹き渡る風がざわざわと木々を鳴らす音が聞こえる他には、何も聞こえない。
「ここですか?」
私は冷えた耳を手で触りながら、傍らに立っている少年に声をかけた。
少年は私と同じように辺りの物音に注意していたが、声をかけるとすぐにこちらに向き直った。
「はい、確かです」
「もう一度確認しますが、どんな音が聞こえたのですか?」
「地の底から響く様な感じの音です。豚が残飯をあさる音に似ていました」
「時刻は?」
「夕方。つまり、今頃です」
「ふむう……」
聞こえない。
豚が残飯をあさる音どころか、風の音以外には全く何も聞こえない。
「ほ、本当なんですよ。信じて下さい」
少年は、すがる様な目で私を見た。
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