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♥♠♦♣
これはまだ相場涼子(アイバ・リョウコ)が五歳の頃の話である…
『お嬢様――!!』
付き人達が、彼女を探して、町中を駆け回る。
ある者は電柱に登り、ある者はゴミ箱を覗き、ある者は家宅浸入している。
まぁ、黒い服にサングラスの男がそこら中にいるわけだから、一般人には迷惑な話である。
てゆーかどこかズレている、この調子では見つかるわけがない。
「いたか!?」
「いや…。」
「もっと良く探せ!!」
そう言い、またバタバタと、男達が騒がしく去って行った。
それを確認すると、ガサガサと音を立てて、涼子は木の上から、少しよろめきながらピョンと降りた。
「フン……。」
それだけ言うと、仏頂面で何やら不満そうな顔をしている。
…どうせアタシじゃなくてお金が大事なんでしょ?ほっといてくれる?
季節は冬、彼女の髪はまだ赤くはなく、黒いストレートな髪の右側を、白いポンポンで結んでいる。
そして彼女は、身を翻すと、わざと男達とは逆方向に髪をピョコピョコさせながら走って行った。
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