あの日の思い出

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時計の針は、23時を回ろうとしていた。 (今日はそろそろ店、閉めるか…) 喫茶店内のテーブルやイスを整え始める。 窓越しに見える庭先のソメイヨシノが、電灯にライトアップされて、見事にきれいだ。 (もう…10年経つのか…) 明日は、自分にとって特別な日を迎える。 <カランコロン…> 突然、入り口ドアのカウベルが、来客を知らせる。 (今頃、誰だろう…) 「すみません、今日はもうおしま…」 ボクはそのお客さんの姿をみるなり、言いかけた言葉を一気に飲み込んだ。 「ごめんなさい…こんな夜遅くに…そりゃ、おしまいですよね…アタシ、帰りますね」 「い、いや…だ、大丈夫ですよ。コーヒー、一杯くらいでよろしければ、すぐ準備しますので…」 「いいんですか?ホント、ありがとうございます。あの…カフェオレ、頂けますか?ミルク多めの」 女性は、カウンターにそっと、腰掛けた。 …似ているのだ…
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