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少年は空を見上げる。
吐く息は白いと言うのに、少年は薄く、ボロボロな衣類を身に纏っているだけだ。
冷たい風にさらされた肌は赤くなり、手はひび割れてボロボロ。片方の靴は大きく裂け、ひび割れて爪のない素足を晒している。
少年に気付いた女が、箒を振り回して走って来た。少年は逃げようと体重移動させる。
それだけだったのに、激しい目眩に襲われ、体勢も整えられず、膝をついた。
女は喚きながら、力を込めて箒で少年を殴る。
「悪魔! あんたなんか、生まれて来た事が間違いなんだよ!」
力を込め、何度も何度も無抵抗の少年を殴る。
「悪魔め! 化け物め!」
女の目から激情に任せた涙が流れる。
「返してよ! あんたが奪ったんだからね!」
殴られ続けられている少年は一切、声を発していない。
ただ、声にならない、掠れた音が口から漏れているだけだ。それでも唇は、同じ言葉を紡いでる。
『ごめんなさい。赦して下さい』
道行く人も、女の家族も、誰も止めに入ろうとしない。
助けて……。
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