雲より高し

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空を仰ぐと雲1つない深い青色をした空が広がっていた。いつもと変わらない空。 でも、私はこの空が好きだ。私は目を閉じて大きく息を吸い込んだ。澄んだ空気が私の肺を満たしてくれる。 しかし、こんな澄んだ空気を吸えるのもここだけ。下の世界の空気はすっかり汚れてしまっているらしい。 そう。ここは雲の上にある世界、そして天使の住む世界。天界だ。 今、私が外を歩いているのはあるお方に呼ばれたから。その方のお屋敷に向かっている。 立派な翼があれば飛んでいけるのだが、あいにく私の翼は申し訳なさそうに背中にチョコンとついた小さなものだ。飛ぶことはまだできない。 まあ、そうは言っても、歩いてすぐのところにお屋敷はあるから実際に飛べても、その必要はなく歩きで充分だ。 ほどなくして、お屋敷の前に着くと中から綺麗な声が聞こえてきた。 「ミズキね。入りなさい」 私が言われるがままに入ると玄関のところにすでにその声の主は立っていた。 .
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