駆け出しヒーロー??

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オレが「江本!!お前いつもなんしよると??」と言うと、江本は少し驚いたようにこちらを見て「イメージたい」と答えた。ますます意味がわからなくなったオレは「何の??」と聞いた。江本は「今は、右のサイドスローのカーブば練習しよる」と言った。オレと菅は顔を見合わせた。オレは《あぁ最近暖かくなってきたし厳しい練習に耐えかねてこいつ頭おかしくなったかぁ》と思った。おそらく菅も同じような事を思っていただろう。オレはからかうつもりで「イメージもよかけど、オレがトスしちゃるけんお前打ってみらん??」と江本を誘った。江本は少し考えてうなずき、打席に立ち構えた。いつものゆったりとした構えだ。そしてオレがトスすると、毎日10km走で死にそうになっている江本からは想像もできない程、シャープにバットを振り抜き、オレのトスした球をジャストミートした。ボールはレフト側のフェンスにライナーですっとんでいった。オレと菅はまた顔を見合わせた。二人とも目が点になっている。「お前スゲェやん!!」やっと言葉がでてきた。江本はバットを見ながら「ちょっとつまったけど、こんなもんやろ」とすました顔で言った。江本はたしかに長距離は遅い。しかし、ことバッティングに関しては非凡なものを持っていた。オレはその時、コイツがチームメイトでよかった思う反面、はたしてこいつに勝てるのかと複雑な気持ちになった。
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