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「……唯弛(イチ)……」
左手でそっと、左目を押さえた。
其処にはもう、金色に輝く瞳は無い。
左目を失ったあの時の記憶が、頭の中にフラッシュバックする。
「……ッ」
―――ギリ……ッ
思わず唇を噛んだ。
そして、三時間前の閏の言葉を思い出す。
〔寝坊した方の驕りな。弁当代〕
「ッ!? ……ヤッベェ!」
慌てて机の上にある白い眼帯を左目に充て、部屋を飛び出した。
―――ドタドタ……ガタッ
勢い良く階段を降りて、居間に向かう。
そして、勢いはそのままに、居間のドアを蹴破る。
―――バンッ
「あ。舛、オハヨ」
そこには、ソファにドッカリと座り、コーヒーを飲みながらテレビを見る、閏の姿があった。
思わず、舛はその場にしゃがみ込んでしまった。
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