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今思えば、会話の中に何度かそれらしい単語を聞いたことがある気がする。
なかば無意識に聞かないで置こうと耳を塞いでいた気がする。
そういうのを避けていたのは事実だが別に嫌悪を抱いているわけではない。
ただ、疑問を抱く。
それならどうしてあたしに迫るんだろう、とか、あたしに言うあの言葉は遊びなのかなぁとか思ってしまうわけである。
「ちなみにあたしは彼女なんかじゃないから」
「そうなんっすか? 最近政人が男漁りしなくなったからてっきりネコさんができたのかと思いましたけど……」
うわあ……望んでもないのに彼の本質が出て来はじめた。
ますます彼がわからなくなってきた。
本質、というより主に性癖が。
政人が同性にしか惹かれないのには理由があるらしいが、瑞希はそこまでは口にしなかった。
確かに、彼以外の場所から彼のことを耳にするのなは正直引け目しか感じない。
きっと櫻井さんには話すかもしれませんね、と言われた。
そうであってほしいと思う反面、そうであってほしくないと思っていた。
あまり干渉せず干渉されず、線を引いた生活に慣れていたから。
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