負けないから

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しん、と沈黙が辺りを満たす。 言葉もなく黙っていたら廊下を歩く足音が聞こえた。 ちょうど戻ってきた政人がこの沈黙の状態をみて訝しむような目を向けてきた。 それに応えるように適当に笑っておけば怪訝そうな目は伏せられた。 「つーか、なんか今日来たの間違いだったな。俺帰る。夕飯今日は俺の日だからさ」 「あぁ、優雅さん? よろしく言っといてよ」 「はいはい」 新たな名前が出てきたが、それに関して聞かされることはなかった。 瑞希は早々においとまして部屋にはまたふたりきりとなり、沈黙が訪れた。 先ほどより幾分重くなって。 な、なにがあったんだろうか。 なにかした? いや、なにもしてないと、思う……多分。 重々しくなった空気。 厳かな口調で問われる。 「あの子の言うことは8割り増しに過大にされています。聞かなかったことにしてください」 「……聞いてたの?」 「まぁ、瑞希がオレのこと話し始めた辺りから」 「それは……なんともSらしい発想ね」 「褒め言葉として受けとりましょう」 ニコリと笑うとまるで気が反れたと言うようにベッドに腰を下ろした。
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