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「改めて言いましょうか」
「なにを?」
「いい加減、素直に落ちたらいかがです?」
「またそのはなし? あたしはあんたみたいなガキにほだされるほど若くないのよ」
興味が失せた。
というより、興味を持つ気になれなかった。
もし今口を利いてしまえば、本当に落とされてしまうような気がした。
そう、気を抜けばあたしはこのマセガキにほだされそうになるから。
口を閉ざして、自分を固定する。
そうすればあたしは、……あたし、は……。
「スキに、なったでしょ?」
子犬のようなその瞳。
まるでお願いするように見つめてくるから戸惑いのあまりに言葉を見失う。
真摯を向けられると弱い自分に気付く。
「オレのこと、スキなんでしょ?」
「違う!! スキなわけない!」
「じゃあアレだ」
「な、なに……」
ベッドから腰を上げるとあたしの座ったソファーに近寄ってくる。
それから耳元に唇を寄せて、甘く囁く。
「オレのこと、愛してるんだ?」
(あたしは、あんたなんか、だぁぁあい、……スキなんだからっ!)
+end
→おまけ?
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