悪夢の序章

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その電話が鳴ったのは、夕暮れも間近な時間帯だった。 最近また帰りがおそくなった海斗は、来たる年末の為に仕事を詰めているみたい。 年末年始は休んで海外旅行だ!! と、ついこないだ言っていた。 もう少しでクリスマス。 中学2年生の遊真と斗真、小学1年生の里海に、今年はどんなプレゼントを渡そうか。 そう話し合ったのは昨晩の事だった。 子供達と5人で飾り付けたクリスマスツリーには大きな靴下がぶら下げられている。 電話の内容を聞きながら、私はただそれを眺めていた。 『僕は桐山雅人と言います。初めまして、結城遊里さん。』 桐山雅人と名乗った男の声に聞き覚えはない。 僕、といいつつも落ち着いた印象を与える声だった。 私の名前を知っているという事は、海斗の仕事関係の人なのだろう。 そう思った私は、いつものように丁寧に挨拶をした。 「初めまして、主人のお仕事のお客様でしょうか?」 すると、電話からはクスッと笑う声が聞こえる。 『いいえ。むしろ…今の僕は結城社長には邪魔な存在でしょうね。』 「…え?」 こういう答えが返ってくるとは思わず、受話器を握りしめながら固まってしまう。
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