5705人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
その電話が鳴ったのは、夕暮れも間近な時間帯だった。
最近また帰りがおそくなった海斗は、来たる年末の為に仕事を詰めているみたい。
年末年始は休んで海外旅行だ!!
と、ついこないだ言っていた。
もう少しでクリスマス。
中学2年生の遊真と斗真、小学1年生の里海に、今年はどんなプレゼントを渡そうか。
そう話し合ったのは昨晩の事だった。
子供達と5人で飾り付けたクリスマスツリーには大きな靴下がぶら下げられている。
電話の内容を聞きながら、私はただそれを眺めていた。
『僕は桐山雅人と言います。初めまして、結城遊里さん。』
桐山雅人と名乗った男の声に聞き覚えはない。
僕、といいつつも落ち着いた印象を与える声だった。
私の名前を知っているという事は、海斗の仕事関係の人なのだろう。
そう思った私は、いつものように丁寧に挨拶をした。
「初めまして、主人のお仕事のお客様でしょうか?」
すると、電話からはクスッと笑う声が聞こえる。
『いいえ。むしろ…今の僕は結城社長には邪魔な存在でしょうね。』
「…え?」
こういう答えが返ってくるとは思わず、受話器を握りしめながら固まってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!