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『ところで遊里さん。会社の顧客情報が盗まれるという事がどんな大変な事かというのは分かりますか?』
人をバカにしたような聞き方だ。
むっとしてしまった。
顧客情報、と聞くとどうしても誘拐された時の事を思い出してしまう。
「もちろん、経営者の妻として理解しているつもりですが。」
苛々が声に出ないよう、出来るだけ穏やかに言った。
だが、桐山雅人は更に質問をぶつけてくる。
『では、例えば、どんな風に大変なんです?』
正直、あまりに唐突で失礼な質問にこのまま電話を切ってやろうかとも思った。
だけど万が一海斗の知り合いだったら?
そう思うと無碍に切る事も出来ない。
「…まず顧客からも世間からも信用は失墜します。これは顧客離れに繋がりますし、世間からバッシングを受ければ新規の顧客をゲットする事も絶望的です。提携や協力をして下さっている海外の会社からも呆気なく契約を切られるでしょうし、そうなれば会社の存続は厳しいでしょうね。」
『…なるほど。でももう一つ忘れていませんか?』
「え?」
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