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私は冷静に考え、落ち着いた声で話した。
「…例えその話しが本当だとして、顧客情報を盗まれたからと言って会社がつぶれるというのは、飛躍しすぎではないですか?顧客情報を盗まれたって生き残っている会社も少なからずありますよ。」
『…さすが社長夫人ですね。確かに、盗まれたとなれば必ずしも会社がつぶれるわけではありません。ですから、僕には考えがあるんですよ。』
ピク。
考え、という言葉に体が硬直する。
『この顧客情報は、結城社長から直接買った。…というふうにマスコミに触れ回るとか。』
「!?」
つまり、海斗が顧客情報を売り渡したって事にするって事?
そんなの…法を破る行為だわ。
そんな事になったら海斗は…。
『でも結城社長は世間からの信頼も熱い。…信じさせる為、あなたたちの馴れ初めなんかも一緒にマスコミに流しましょうかね?』
クスクスと笑う声が背筋を凍らせる。
馴れ初め…?
それが何を指しているかはすぐに分かった。
そうだ。
借金のカタに海斗に買われた。
実際はそうではなかったのだが、世間が聞けばそうは思わないだろう。
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