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封筒の中身は、温泉旅館の宿泊券だった。
しかも二枚もだ。
「…俺たちの小遣いじゃ高いとこ無理で…近場だけど、父さんと二人でゆっくりしてきてよ母さん。」
「チビは俺らに任せてたまには休めよ!」
「里海チビじゃないよ!」
「遊真…斗真…里海…。ありがとうっ…ありが…っ…」
感謝の言葉はそれ以上声にならなかった。
嬉しくて。
幸せで。
胸が暖かさでいっぱいになる。
「あ~もう泣くなよな!」
「笑ってよ母さん。」
「ママ笑って!」
三人に言われるまでもなく、涙も拭かず微笑んだ。
なんて幸せなんだろう。
なんて良い家族なんだろう。
私はなんて、幸せな人生を歩んできたんだろう。
「遊里、子供達に愛されてるお前が俺の誇りだ。もちろんお前を一番に愛しているのは俺だが。」
甘い視線を向けながら海斗が言った。
「私も…子供達に尊敬され私に愛されてるあなたが誇りよ。私はずっと、あなたの愛に捕らわれたまま。」
見つめ合い言うと、斗真が咳払いをする。
「…とりあえず食べませんか皆さん。」
変な敬語に我に返り、真っ赤な頬を隠しフォークを握った。
もちろん、テーブルの下で愛しいあなたと指を絡ませたまま――――。
END
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