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海斗が帰って来たのは、深夜12時過ぎの事だった。
あれからしばらく受話器を握り締めたまま動けなかった。
大平さんと茜さんが夕食の時間だと呼びにくるまで、ただそこに立ち尽くしていた。
色々な事が頭をよぎり、何一つ整理できない。
子供達が寝たのを確認して、リビングの椅子に腰かけ机に肘を預けた。
頭を抱え、必死に考えようとする。
顧客情報を盗まれたのは、本当なのだろうか。
桐山雅人の反応を見る限りでは間違いない気もする。
それに、…私達の出会いを知っていた。
あれこれ手を尽くして調べたのかもしれない。
実際、海斗に恋した女の子が私の過去を調べ上げた前例もあるのだ。
…調べようと思えば調べられない事じゃない。
出会いを後悔してなどいない。
ただ、今はまだ…子供達にそれを知られるのは早い気がしていた。
まだ難しい年齢なのだ。
両親のそんな話しを聞いて心が痛まないはずがないのだから。
できる事なら一生知られない方が良い事実だとすら思っていた。
今は真剣に愛し合って幸せなのに、わざわざ話す事でもない。
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