第一章

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「ほらよ」 俺は笑いながらそれを男の子に渡した。 「ありがとう!」 男の子は嬉しそうに受け取った。 「もう無くすなよ、ちびっこ」 俺がそう言うと男の子は頬をぷくっとした。 怒っているんだろうが可愛いだけだぞ。 「ちびっこじゃないもん! ぼくは、しょうたってなまえがあるもん!!」 そう言いながら俺の足をポカポカ殴ってきた。 全く痛くないんですが。 「そっか。翔太って言うんだな。 ちびっことか言って悪かったな」 「…べつにいいよ」 まだ若干怒っているのかそっぽを向きながらそう言った。 こいつめ… 少しいじめてやろう。 「翔太、あれなんだ?」 俺は遠くを指さす。 「えっ?」 翔太は俺の指の向けた方に目をやる。 馬鹿め!ひっかかったな!! 「こちょこちょこちょこちょ」 「やっ、やめ…アハハハハ!!!」 無防備になっていた翔太の脇腹をくすぐってやる。 翔太は弱点なのか凄い勢いで笑いだした。 「はぁ…はぁ…」 翔太は笑い疲れたのか息を荒げている。 「そっぽ向いた罰だからな」 「むぅー、ひどいよ!」 そう言って翔太はまた俺の足をポカポカと殴りだした。その時に気がついたのだが辺りは真っ暗になっていた。 「翔太?」 「えいっ!えいっ!」 まだ俺の足を殴り続けてる。 だから痛くないって… ってそんな事じゃなくて!! 俺は翔太の目線の高さに合わさるように屈んだ。 その瞬間に顔にパンチがきたため流石に受け止めさせてもらった。 「ちっ…」 「ちっ…じゃねーよ。」 おっかねーな。 精神年齢いくつだよ? 「それより暗くなっちまったけど帰れるか?」 そう言うと、やっと辺りが真っ暗になったのに気がついたのか不安そうな顔をした。 こんな小さい子を一人で帰すのも流石に俺の良心が痛むし… 「自分の家わかるか?」 「うん」 「道はわかるか?」 「う…うん」 不安だ… とてつもなく不安だ。
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