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ピーッ!ピーッ!と警告音が機内に響き渡る。
客室乗務員がマイクを使い乗客に指示を飛ばす。
乗客は全員シートベルトを強く体に巻き付け、椅子の下にある緊急用のバッグを手元に寄せた。
「いっ…嫌だ…。」
「助けてくれー!!!」
「うわぁぁぁーーー!!!!」
あちこちからは悲鳴が上がる。
しかし、助けを呼んでも助かる訳ではない。 どうする事もできないのだ。
徐々に飛行機のスピードは上がっていく…。
そう高度が下がるのに比例して…。
全ての人が悲鳴をあげた。
助からない
それを悟った一人の中年の男は目をつむった。
家族、友人、そして今までの過去を振り返ったのだろう。
一瞬のうちに思い出がフラッシュバックをした彼は少しだけ表情が明るかった。
楽しかった
まるで、そう言っているようだった。
しかし、表情はまた暗くなる。
「…やり残してしまった」
目頭に手を当ててそう呟く男の顔には先ほどの明るい面はなかった。
飛行機は更にスピードを上げ、落ちていく。
海上まで後、500mを切る。
そして、眼前に真っ青な海が広がった瞬間に一つの声だけが聞こえた。
【もっと幸せを届けてあげたかった】
轟音と共に水しぶきが果てしなく上に…空に向かって飛んでいき、飛行機は跡形もなく砕け散った。
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