第一章

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「やっちまったー…」 俊樹がタイヤを見ながらあからさまに落ち込んでいる。 タイヤは完璧に空気が抜けてフニャフニャになっている。 もし、ゴムが悪いだけなら俺でも… 「どけ」 俺は俊樹を横に押すとタイヤを触って、空気の抜けている所を探し始めた。 空気入れでもあればなぁ。 音で場所とかすぐにわかるんだけど。 タイヤを触り続けると、一部分だけ中から風を感じる場所を見つけた。 「ここか。これなら~…よし。 俊樹、今からうちに来い。 俺でも直せそうだ」 「マジか!?流石だな!」 俊樹は嬉しそうに笑うとハイタッチを求めてきた。 乗ってやっても別にいいが…… 「イエーイ!」 「ハッ、手ぇ見てみろ」 「んっ?……………ハァァーー!?」 俊樹の手は真っ黒になっていた。 そりゃ俺が自転車を触りまくってオイルとかが手に付いてるからな。 そんな奴にハイタッチを求めるお前が悪い。 「優ー!!やりやがったなー!!」 真っ黒になった手を俺に向けて伸ばしながら追ってきた。 「お前!ちょっ…やめろ!! って…あーー!!服がぁーー!!」 その後も公園で俊樹と戦闘を繰り広げた。 俺の制服のカッターシャツは所々が黒くなってしまった。 もしもこれがブレザーだったら…。 多分あそこで伸びている俊樹の姿は灰になって消えていただろう。 「灰にならずにHighにな~る!」 「リアル死ね!」 伸びていたはずの俊樹が意味不な言葉と共に起き上がる。 つぅかこいつ俺の心でも読んだのか? まぁなんでもいいがとりあえず俊樹の顔面に向けて俺のは右ストレートをお見舞いしてやった。 「当たらな~い」 ブチッ 普段でもふざけた顔をしてやがる俊樹が更に挑発するような変顔をしてきたため頭の中にある線が切れた音がした。 「死ねっ」 拳を握りしめて俊樹に近付いていく。 「あはっ…あははははっ…。いや、冗談だって!マイケルジョーダ~ン」 某バスケ選手の物真似をする俊樹の額からは汗が流れている。 バキッ!!! 「ぴぎゃーっ!!」 華麗な右のアッパーが炸裂し、俊樹の体が宙に舞う。 「あ~、スッキリした」 「あんた鬼ッスね!!」 いや、人間だ。
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