第一章

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時間が過ぎてしまったが俺の家に向かいだした。 それなりに距離はあるのだが、喋りながら歩くと一人で歩くよりも数倍早く道を進んでる気がする。 気が付いた時はすでに家に着いていたくらいだしな。 俊樹を外に待たせると、庭にある倉庫からタイヤのチューブを持ってきた。 「本格的だな~」 「普通だぞ。つぅかこれやらないと直らないだろ?」 喋りながらも作業をテキパキとこなしていった。 自転車の修理なら何度もやった事があったので簡単に直す事ができた。 「終わった」 「サンキュー!!」 空気を入れて完全に直った自転車を俊樹に渡すと、俊樹は確認のためか家の前の道路を回りだした。 「とりあえずブレーキは掛からないようにしといたから」 「えっ?……えぇーーー!?」 「嘘だ、馬鹿」 しかし言うのが若干遅かった。 急ブレーキを掛けた俊樹はその衝撃で勢いよく前に飛んでいった。 顔から落ちたため立ち上がって見えた俊樹の鼻からは血が出ていた。 「エロい事考えてるからそうなるんだよ」 「ちっがーーーーう!!! 完っっっ全にお前のせいだろ!!」 いやいやいや、ブレーキ掛けたお前が悪いだろ?時間も遅くなったため、カラオケは諦める事になった。 自転車を完全に直す事ができた俊樹は家に帰っていった。 俊樹を少しだけ見送ると家の中に入った。 「ただいま」 抑揚のない声で俺がそう言うと、トタトタと足音が近付いてきた。 「おかえりなさい、兄さん」 可愛らしい声と共に綺麗な短い茶色の髪を揺らしながら妹の、羽田 瑠璃が近寄ってきた。 「今日は早いんだな」 俺の一つ下で少し離れた私立に通っている瑠璃はいつもは9時前くらいにならないと帰ってこない。 「今日は部活がなかったの」 クスッと笑う妹の表情は身内贔屓なしでも可愛いと思う。 頭もよく、部活でやっているテニスは県大会常連と文武両道。 更に容姿端麗といったらツッコミ所がない。 ほんと俺みたいな友人も少なく、評判の悪い兄とは似ても似つかない。 「あっ、あのね!兄さん」 「んっ?どうかしたか?」 罰が悪そうに視線を落とすと、瑠璃は申し訳なさそうに俺の顔を覗き込んできた。 上目遣い、っていうのか? 俊樹なら間違いなく鼻血を出して倒れるだろうな。 そんな事を考えている俺に向かって瑠璃は一枚のメモ帖を渡してきた。
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