旅立ち

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はるかなる昔、世界は五つの階層に分かれていた。それは五星界と呼ばれている。 ヒューが子供のころは、第一星界はまだ緑あふれる豊かな世界だった。 それが今は、ゴミ廃墟の埋め尽くす世界に変わっている。 「布告 ゴミの増加に比し、労働力の欠如著し。それにより、処理に従事すべき時間を増やすべくものである。それを容れぬ者は、死をもってその罪をあがなうものとする」 キララタウンに立てられた札には、第一星界を治めるヘードからの布告が記されていた。 ゴミに埋もれた第一星界の住民は、ゴミを処理することを義務付けられ、それによってなんとか生きることを許されていた。 「なんてこった。今までだって過酷な労働で命を落とす者もいるというのに」 「わたしはもう夫も子供も殺されたわ。もう生きる意味もないから、丁度いいのかもしれない」 「なんでもヘードは、この布告を徹底するために、近く隣村にくるそうだ」 反感を口にする者、絶望する者。みな、それぞれの思いをもってその立て札を受け入れたようだった。 民衆は駒であるというのは、真理ではないが、支配者の行動原理にはしばしば見られるものであろう。たいていの者はそれを受け入れるしかない。 しかしそれができなかった者が一人いた。 「俺がヘードのところへ行ってやる!」 立て札に群がる民衆から、若い男の声が発せられた。 その声に、どよめきが疑問をなげかける。「どういうことか」と。 「俺がヘードのところへ行って。そしてやつを倒す」 「無茶を言うんじゃない。お前は勇者じゃないだろう」 その男は確かに、キララタウンで生まれ育った平凡な男だった。 名前をヒューという彼は、今年17になったばかりの少年にすぎなかった。 「勇者はきっと現われてるさ。ただ、まだこの星界を元に戻せていないだけなんだ。俺がその手助けをするんだ」 勇者伝説がこの星界には古くから伝わってきた。 均整のとれた体を持つヒューは、青い瞳に力をこめて自分の信念を発した。
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