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指先が震えながら胡珀が指しているのは血だらけの人であった。
桐弧はそれを見て近づこうとするが、一瞬躊躇する。
「尻尾が……ない……?」
「あわわ……に、人間……だよね……」
それを聞いて桐弧は硬直する。
親から聞いた歴史ではこの世界には尻尾を持たない人が入ってきたことがないと言われていたからだ。
それに、表の世界の話も聞かされている。
今二人の目の前にいるのは表の世界の人間……。
「どどど…どうしよう……」
「落ち着いて……とりあえず、
胡珀は村長の所へ……」
「桐弧は……?」
「……見た感じ、動けなさそうだけど逃げないように見張っているわ。」
「そんな…!?」
「一応、短刀があるから……いざって時は……」
桐弧は少しでも胡珀が心配しないようにと配慮したんだろう。
胸元に仕舞っていた短刀を取り出し、抜き身にする。
「………わかった、無理だけは」
「わかってるわよ。 私だって怖いんだから……」
「うん……」
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