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「お母さんただいま」
「おじゃまします」
「おかえり、そしていらっしゃい」
優しく微笑んで二人に声をかける。
桐弧の母、観那は肩に掛かるぐらいのセミロングで銀色の髪の毛だった。
見た目はまだ三十代になるかならないかに見えるが、実際は四十を超えている。
「ところで、急に呼び出されたけど……何かあった?」
いつもなら呼び出されることがあまり無いだけに緊張の色が隠せない。
観那も目を細めて桐弧を見つめる。
「実はね……」
「実は……」
「明日の分の薪を少し拾ってきてくれない?」
その言葉を聞いて桐弧は前のめりに転ける。
観那は、あらあらと言いながら右手を自分の頬に添える。
「そんなことを真剣な顔つきで言わないでよ!?」
「だってぇ~、お父さんは狩りに出かけてるし、荒騎(こうき)は裏山に木の実を取りに行ってるし……」
「それで私しか思いつかなかったから胡珀に呼びに来させたの……?」
「そうよ?」
桐弧は項垂れ大きなため息をつく。
胡珀は二人の会話を見て、ただただ苦笑するしかなかった。
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