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だが、雪と出会い、雪の信念、想いに触れていくうちに自分の為すべき事がはっきりとわかった。
それはこの命を賭けてでも、雪の笑顔を守り、愛する者が住むこの京に蔓延る(はびこる)悪を斬る剣となり、弱き人々を守る盾となる。
そのために今も、新撰組零番隊という暗殺部隊に身を置き、夜毎、法では裁けぬ悪人や、人々を苦しめる幕府の役人を斬っている。
この玖郎の愚直なまでの、まっすぐな想いは、九郎の心にも同居しており、思春期の彼には、恥ずかしさで身悶えさせるには充分であった。
だが、それは照れるべき事であっただろうか?
「急に来られるとはどうされたのですか?一言、ご連絡下されば私(わたくし)もお迎えする準備ぐらいしましたのに……」
玖郎を抱きしめ、その胸に顔を埋めていた雪は、拗ねるように頬を膨れさせ、玖郎を見上げるように聞く。
「済まないな。急に時間が空いて、持て余したから、寄ってみたんだ」
「まぁ!雪は玖郎様の暇つぶしでございますか?」
そう言って雪は、更に頬を膨れさせる。
「はは、冗談だよ。雪を驚かそうと内緒にしてたんだ」
「もうっ!玖郎様の意地悪……」
こうして語り合い微笑む玖郎を見ると、今朝の夢の大男と対峙した時のような、あの氷のような冷たい顔とは別人のようだ。
お互いのことを大事に、想っているのだろうなと思う。
ふと、遠くに住んでいる幼なじみの顔が九郎の頭に浮かんだ。
――――もうどれくらい会っていないだろう?
次の夏休みには会いたいよな……
バイトでもするか?――――
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