恋人

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雪は誰彼かまわず、刀を打ったりはしない。 刀を我が子のように扱う雪は、その人物が信頼に値するかどうかを、見定めてから刀の製作に取りかかる。 雪の打つ刀は、丈夫でよく斬れると、評判がいいため連日、製作依頼が舞い込む だがやはりこのご時世。 刀を殺人のための凶器にし、罪もない人を殺す輩が増え続けているため、雪はおいそれと打とうとはしない。 中には金さえ積めば、どんな人物にも刀を打つ鍛冶師もいる。 というよりもそれが普通なのだが。 雪が頑固すぎるのである。 そのため普段は、包丁やハサミ、鍋などの生活雑貨を売って生活している。 「え、えぇ……信用できる方がいらっしゃいましたので……」 「雪を口説き落とすとは大したものだ。俺も是非、会ってみたいものだな。」 「それは難しいかと思いますわ」 「そうなのか?」 「はい、お忙しい方でいらっしゃいますので……」 「そうか、それは残念だ……」 というような事を話しながら二人は、母屋に入っていった――――――。
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