日常

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『星凰学院前~星凰学院前~』 電車のドアが開いた。 「わ、ととっ」 ドアに寄りかかりながら、寝ていた九郎は支えをなくして、転げ落ちそうになりながら外に出た。 周りの視線を気にしながらも、なんとか平静を保ち改札を出る。 この駅に乗り降りするのは学生や学校関係者が多い。 制服を着た生徒たちが次々に学校へと向かっていく。 九郎の通う学校は、私立(星凰(せいおう)学院高等学校)という。 九郎の住む千葉県茜浜区から、電車一本で行ける、自由と自立をモットーにした、私立高校である。 といっても、実際やることは、普通の高校となんら変わらないのだが。 九郎がこの学校を選んだのは、家から一番近く、学力的にもちょうどよくて、私立とは思えないほど学費が安く、女子生徒に美人が多かったからだ。 学校に到着し、下駄箱で靴を履き替えてから、自分のクラスである1―Aに向かう。 既に教室にはもう何人かのクラスメイトがおり、友達同士でお喋りをする者や、自分の席でマンガを読んだり、携帯ゲーム機で遊んでいる者もいる。 九郎は自分の席に座ると、顔なじみのある男子生徒が、九郎の前の席に座って、体ごとこちらに向けて、声をかけてきた。 「うぃっす!おはよう九郎!」 「あぁ、優(ゆう)か。おはよう」 彼の名前は、小澤 優(おざわ ゆう)。 入学して最初に並べられていた、席の左隣に座っていたので、自然と話すようになり、今では一番つるむようになった男子だ。 明るい性格で、クラスの中心人物で、よく男女混同のグループでよく遊びに行っている。 少しオタクが入っているが、話しやすくていい友達だと、九郎は思っている。
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