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賑やかな夜の京。
夜の街を、紅い影が歩いていく。
高校生、天井九郎(あまい くろう)はここ最近、おかしな夢ばかり見るようになった。
それは一人の剣士の夢。
なぜこのような夢を、見るようになったかはわからない。
わからないがこの夢は妙にリアルで、夢かどうかもあやふやになってくる
しかし、これは夢だ。
第一、九郎ははっきりと記憶しているのだ。
自分がベッドにもぐりこんで眠りにつくのを。
ふっと気が付いたら、こうして夜の京都を歩いていた。
疲れてんのかな?
最近は高校の入学準備や、クラスに馴染もうと、それなりに神経使ったからな…
その剣士の名前は[安馬乾 玖郎(あまい くろう)]と言う。
名前も一緒だが、姿形も自分にそっくりだった。
以前の夢で、水を溜めた水桶を通して、反射した顔を見たことがある
黒衣黒袴に丹色(にいろ=暗い赤土色)の羽織りを着て、腰まで伸ばした黒髪を、一つにまとめて縛っているところやそ腰に差している大小の刀は〈現実〉とは違っていたが。
だが、決定的に違うのは氷のように冷たく引き締まった表情だ。
こんな風に引き締まった顔をしていれば、幼い頃からのコンプレックスを感じていた、「女の子みたい」とは言われないだろう。
とにかくその[玖郎]は凄腕の剣士で毎日、誰かと殺し合っていた。
それも決まって夜。
そして玖郎が住む世界は昔の日本。それも江戸時代の末期。
幕末とも言う。
なぜわかるのかと、聞かれても返答に困るが、なぜか九郎自身の記憶に、今は《安政八年》だと認識している。
あとはこの玖郎が、幕府直属の警察組織、【新撰組】の暗殺任務を請け負う、零番隊という特殊な部署に、所属していることも自身の記憶に刷り込まれている。
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