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ここからしてこれは夢なんだなと思うところである。
確か、警察組織が形になったのは、明治時代に入ってからだったというのを、学校の授業で習ったことがあるし、幕末に『新撰組』という武闘集団が実在していたのは知っていたが『零番隊』なんていうのは聞いたことがない。
九郎が知っている歴史とは微妙に違うのだ。
それはそうと、今宵も玖郎はどこかに出かけてゆく。
どれぐらい歩いただろう…?
誰かを探してるのかかなりの距離を歩いている気がする。
月がきれいだな…と思った
河原に着いたところで、目当ての人物を見つけた。
派手な着物を着ていて体格もがっしりといかにも強そうな大男だ。
それに対して玖郎の方は、小柄とも言うべき体躯で、相手の大男とは正反対。
玖郎は、大男に声をかけた。
「過激派攘夷団体回天党党首、田中 信十朗殿とお見受けする」
「あん、なんだ。誰だ、貴様は?」
「新撰組零番隊、安馬乾 玖郎」
「丹色(にいろ)のだんだら羽織りに女子(おなご)と見紛(みまご)う体躯……。貴様、あの“人斬り玖朗”かっ!?」
零番隊では、暗殺を主な任務にするという、その特殊性から、他との差別化を図るために、通常の新撰組隊士が、着用する浅葱色のだんだら羽織りではなく、血のように赤く暗い、丹色の羽織りが支給されている。
「そう呼ばれていることもあるな……」
「その“人斬り玖朗”が、俺に何か用か」
「先日の旅籠屋強盗事件に貴殿が関与しているとの情報が入り、貴殿の始末に参上仕(つかまつ)った…」
男の顔が一気に青ざめる
「じ、冗談じゃねぇ!!なんか証拠でもあんのか!?」
「疑わしきものは罰する」
つまり証拠がないという発言に、男は幾分か安心したのか突然、態度は豹変し、尊大な態度で、玖朗を威圧する
「はん!証拠もねぇのに変な言いがかりつけてんじゃねぇぞ!クソガキがっ!」
「……本当に関与はされていないと申されるか?」
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