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そもそも抜刀術というのは相手に襲われる時の反撃、または襲う事を想定している。
抜刀時の初撃にはかなりの速度があり伸びもあるのだか、片手打ちであるためどうしても両手の威力には適わない。
そのため護身用、あるいは危機回避のための技術であり、積極的に使うものではない。
よってその構えは自然と待ちの姿勢になる。
だが玖郎の構えは、右足を前に出してギリギリまで折り曲げ、左足を後方に伸ばして膝を地面にすれすれに構え、まるで肉食獣が獲物に飛びかからんとする構えだ。
「馬鹿が偉そうに正義を語るな。回天党?名乗るなら『悪党』と名乗るんだな」
『よく言った!玖郎!!』
九郎は心の中で玖郎を賞賛した
「このクソガキがぁぁぁぁぁぁ!!」
まさかの玖郎の侮蔑に、男は顔を真っ赤にしながら突っ込む
両者の間合いはおよそ、3m程。
男が動いたのと同時に、玖郎も動いた。
ギリギリまで曲げた右足のバネを使い、大男に向かって突進する。
一瞬のうちに大男の懐に潜り込む。
速い―――――っ!
だが、目で追えぬ速さではない。
かまわず得物を振り下ろす大男。
しかし、刀を振り下ろした先に、玖朗の姿はなかった。
(消えた……?)
辺りを見回す大男。
「どこを見ている」
その時、背後から声がした。
慌てて後ろを振り返ると、そこには抜き身の刀を構えた玖朗がいた。
「っ!?」
「……成敗!」
大男が反応する前に、玖郎は刀を両手で持ち、左肩から腰にかけて斜めに斬り裂いた。
血飛沫を上げながら声も上げずに倒れる大男。
一方、玖郎は一言そう呟くと、返り血も浴びずに刀にこびりついた血糊を振り払い、それを鞘に収めて、玖郎は自分が斬り殺した大男には、一瞥もくれず、去っていく。
その姿を最後に、九郎は目が覚めた。
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