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時を同じくして、銚子市南部。
その海岸沿いには、一つの豪華な邸宅がそびえていた。
その表札には、こう書かれてある。
『上之宮家』
「『ヴァルハラ』のシドニー制圧以来、世界はこうも荒れてしまったな……」
太平洋を一望できるその部屋で、一人の恰幅のいい男性が海を眺めながらこう呟いていた。その後には、ジャケットを羽織った女性が、サングラスの奥からその鋭くも美しい眼光を見せていた。
「ええ、そして『ヴァルハラ』に呼応するかのように、世界各国でテロリストが隆起した。それはここ日本とて例外ではありません」
女性のその言葉に、男はこう返す。
「確か日本で確認されているのは、『レッドライジング』と『イデオ回帰教』……そして、『ロックバード』だったな」
「……ええ」
女性は苦笑いを浮かべながらサングラスを外した。
『レッドライジング』『イデオ回帰教』そして『ロックバード』。
それぞれが日本政府で認定されている『武装テロリスト』である。
『ヴァルハラ』の動きに呼応するかのように、ゲリラ的な破壊活動を行う『レッドライジング』。
教祖『イデオ下田』の元、日本に新たな国家を造ることを掲げ、都市型破壊活動を行う『イデオ回帰教』。
そして、高度な技術力で武装しているとも言われている謎の組織『ロックバード』。
それらは明らかに日本政府の脅威となっており、国民の間でも『排除すべき敵』との認識が広まっている。
「だが、『イデオ回帰教』は二ヶ月前にその教祖が拘束され、事実上解散したようだが……」
「ええ、ですが彼らは秘密裏にPGを得たと言う話もありますし、予断は出来ません」
男=上之宮 弘一はただ海の向こうを眺めているだけだった。
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