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―― 逃げなきゃ!
愛流は反射的に駆け出そうとした。だが、彼女は動けなかった。
全方位から響く振動、銃声、悲鳴。
一体、どこに逃げればいいのか、と。
そんな彼女の視線に飛び込んでくるのは、銃を持った者の姿であった。
見ただけで誰もが戦慄を覚える、その血走った瞳。
瞬間、彼女はそれに背を向け、力の限り駆け出した!
だが、同じような瞳を持った者が銃を持って前方から迫り来る!
「うそっ!」
考えている暇は無い!
咄嗟に愛流は路地裏に入る!
大抵の人はそこで更に逃げることを考えるだろう。
だが、愛流は違った。
―― こうなったら、もう『ダメモト』ね
『駄目で元々』、略して『ダメモト』!
愛流が信じてやまない言葉である。彼女が何かに対して諦め掛けたとき、常にその言葉を唱え、その危機を乗り切ってきた。
そう、愛流は確かに今、逃げ切ることを諦め掛けていた!
それならば、逆に迫り来る敵を倒して逃げる事を選ぼうとしていた!
確かに『無謀』!
だが、明らかに戦わずして逃げ切ることは叶わないのだ!
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