プロローグ

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俺も今まで一度しか行ったことがない場所だ。 その名も栖張滝(すばりたき)。 それほど滝らしい滝でもないし、あんまり地元民も来ることはない。 「右…だね」 「うん…」 そして俺たちはその道を右へと曲がり、栖張滝を目指す。 この山を最後に登ったのは、おそらく小学校低学年の時だろう。 もうあんまりどんな道だったかは覚えてないが、前の二組は一周してこれたから大丈夫だ…と思いたい。 「怖い…」 玲奈は俺の腕にしがみついてきた。 恐怖とドキドキが一緒になって俺の心臓がヤバいことになっている。 「大丈夫大丈夫。何にも起こりゃしない…」 ガサッ! 「っ!」 俺たちはビクンと同時に反応して、音の方を見る。 「今の音…何?」 「そ、そんなに怖がることはないさ…。はは…た、狸だよきっと…」 落ち着け俺、平常心を保て。 幽霊なんかいない、幽霊なんかいない…
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