猫と親衛隊のはなし

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猫と親衛隊のはなし

「どういうこと」 なんの因果なのか、今日は昼休みも放課後も集会で潰され、結局真意を突き止めるために光へ言及しに行けたのは夜だった。 皆の手前、生徒会命令という団長指名を断ることもごまかすこともできずあれよあれよと参加した応援団の集まりでは、当たり前のように生徒会へ思いを馳せる親衛隊たちの冷ややかな視線が突き刺さった。望んでいないにしろあそこで降りるとは言い出せない。それこそ親衛隊の反感を買う。 「…昨日から責められてばかりだな」 「はぁ!?光の一存で決まったって聞きましたけど!?つか責められるって分かってながら決定押し切っただろ!」 書類に目を通しながら、めんどくさそうにため息をつく光に苛立ちは隠さないし隠せない。今更、この男の前で被る猫は持ち合わせていない。 視線も合わせないまま、依然として書類確認に没頭する光は、俺からしたらわざと神経を逆撫でしているように見える。 昨日の徹夜がこたえてたのか、どことなく疲労も見える。が、そんなの気にしてられない。今後の俺の疲労に関わってくることだ。 テーブルを挟んで、詰め寄る。 撤回可能なら今すぐにでも撤回していただきたい。 ため息をついて、俺を見上げる光の目には撤回という選択肢はなさそうだけれど。 「4チーム編成だ」 「……知ってるけど?」 それが? 毎年恒例体育祭、色は4つに分けられる。青龍、白虎、朱雀、玄武と四龍の名をあて、青白赤緑でわける。 昨年も参加してる。 なんなら体育祭の運営の手伝いも今回はやっている。 知らないわけが無い。 「白虎の応援団長は東堂だ」 「…それも知ってる。青龍が俺で、朱雀は森田、玄武が伊藤だろ。今日見てきた」 「言わずもがな、応援団立候補は親衛隊が多い。統率できるものが上に立つべきだ」 そうなのだ。 今回、生徒会から応援団長に指名されたものは、大体学園に名を広めているものばかりだった。 俺は当然親衛隊統括として。 東堂は光の幼なじみで、風紀副委員長。その仕事ぶりを見れば、委員長のほうが向いているが本人が辞退し副委員長として席をおいている。 規律にうるさい風紀は何かと文句を言われやすいが、東堂は気のいいお兄さんみたいな性格でそこらへんものらりくらりとかわせていた。 森田は新聞部副部長。情報通で敵には回したくない人物No.2。まだ1年の頃、まだ生徒会長でもなく親衛隊統括もないあの頃に俺と光をパパラッチした張本人。 伊藤は空手部副部長。強いのは当たり前で、真面目な性格だ。曲がったことは嫌いで、その手腕をかわれて風紀に駆り出されているところを度々みかける。 たしかに、このメンバーを見た時にはもう光の思惑は察していた。しかし納得できないものはできない。 「俺だけ2年なんだけど?」 「…反感が出るようなら俺が黙らせる。悪いけど頑張れ」 「いやいやいや」 応援団長は普通3年が担当する。 なんでってラスト体育祭、華やかな応援団長として立ってもらいたいのは当然3年だからだ。 青龍には副会長がいるが…まぁ除外だな。生徒会の仕事に加え応援団なんかやっていたら明らかなオーバーワークだ。生徒会の運営に響く。 でもだからって…。 「すでに青龍の応援団員の目は冷ややかだよ…」 「悪い」 苦渋の決断だったらしい。 こうなることも目に見えていたし、でもだからといって他に親衛隊をまとめられる3年が青龍にいなかった。外部が来校する体育祭、親衛隊絡みで揉めるわけにもいかないから団長は絶対に親衛隊または他の連中をまとめられるものじゃないと後々困るかもしれない。 リスクを考えれば、最初に買う反感など安いものだと思えば…うーん、思えなくもないけど。 少し考えて、渋々自分を納得させた。 「…分かった」 「助かる」 「そんかわり、文化祭。俺は絶対運営には回らないよ」 「まじか」 「まじです」 仕方がない。 体育祭は我慢しよう。運営だろうが応援団長だろうがなんだってやってやる。親衛隊統括の立場だってしっかり守ってやる。 でも文化祭はだめだ。 「あと、文化祭のメイド喫茶店の運営権限うちにちょーだい」 「いいけど、お前去年も言ってたな。そんなに女装したいのか?」 「したいかしたくないかって言われたら、したくないよ。でもちょーだい」 「…分かった。じゃあ、まかせるぞ」 じゃあもなにもクソもあるか。 最初から押し付ける気で相談もなく指名したくせに。 とりあえず交渉終了。 憤りもいつの間にかおさまり、文化祭も権限確約されて力が抜けた。ドっときた疲労感にまかせて、ソファに身を投げる。 その間も、光は黙々と作業をしている。 「休みの日もそのくらいやればいいのに」 「休みの日は休めってお前が言ったんだ」 「俺がいる休みの日は仕事すんじゃん」 「テルが手伝ってるあいだは、そこまで苦に感じない」 手を止めることなく、そんなことを言う光の顔は穏やかだ。うっすら笑みさえ浮かんでいる気がする。 そんなにひとりで仕事するの嫌か。 やっぱコイツうさぎちゃん確定だな。ただの寂しんぼだ。 「…そういえば最初から、光はよく俺のところに来てたね」 「最初は偶然だけどな」 じゃあ、最初以外は狙っての確信犯かよ。 何度こいつにお昼寝スポットを横取りされたことか。人通りの少ないところでも、光がいるとなれば親衛隊が湧いてくるため、もう何個もお昼寝スポットを潰されている。 今では、あの屋上しか残っていない。 「その素直さが憎らしいなー」 「さっきから何いってんだ。話終わったんだし手伝えよ」 「はいはい」 なにはともあれ目の前の仕事を片付けていかなければいけない。体育祭の種目決めなんて夏休み前にしとけばいいのに、まぁなんせイベントが多いので一学期もそれどころじゃなかった。 目前に迫っている体育祭を乗り越えたら文化祭、大して日もあけずにハロウィーンがくる。…文化祭とハロウィーン一緒にしてくれよ。 体育委員が大忙しになるこの季節は、朝から晩まで体育祭の準備に明け暮れる。会場作りは業者だが、看板づくりから種目決め、パンフレット作り、そして生徒たちは体育祭に備えて練習が始まる。 それに加え応援団は応援団練習が始まる。 「物品はチェック終わってるの?」 「明日生徒会と体育委員でやる。今日全校生徒の種目決まったから打ち込み頼む」 「粗方こないだ作ったからすぐ終わるよ?」 「じゃあチェックいれるから発注まで頼む」 「分かった」 体育祭の準備、早急に進めねば。なんせ今月。いうなれば再来週。 スケジュールおかしすぎる。 そんな愚痴を心の中でボヤきながらも、手は淡々と動かしていく。本日決められた各クラス、各チームの出場種目を打ち込み、去年と似たようなタイムスケジュールで組んでいく。 打ち込みながら選手選抜の名前に目を通すが、とんでもない激戦区。あたりまえのように陸上部を筆頭に運動部エースたちの名前が連なっていた。今日断固拒否してよかった。 カタカタと打ち込み、ざっと確認する。 1年が入学してきた時、パソコンに全校生徒の名前を学習させて正解だった。来年もやろう。 試作品として出来上がったパンフレットを出力して、光に提出する。光が確認作業している間に明日物品チェックをするためのチェックリストを作っていく。ついでに購入品リストの白紙も作り、明日不足なものがあればこれに書いてもらおう。そしたらあとは発注するだけだ。 「テル、これで大丈夫だ。印刷会社に発注よろしく」 「部数は?」 「…1000?」 「生徒分しかないじゃん」 「じゃあ2000で」 「適当だなぁ」 一応2300で発注する。 余ったら余った時だ。必要経費として諦めてもらおう。 お互い必要会話のみで淡々と作業をすすめる。いい調子だが、体育祭にしろ文化祭にしろハロウィーンにしろ現場仕事のほうが多い。 親衛隊のお手伝い募らないとなぁ…。 てかぼちぼち生徒会メンバーと親衛隊の交流会設けないとなぁ…不満が爆発してしまう。 「光ー」 「あ、テル明日の物品のチェックシート」 「やった、終わった。明日不足なものあれば購入品リストに書いて。読み込むのもめんどいからFAXして」 「助かる!!」 …修羅の勢いで仕事を終わらしていく光に、親衛隊との交流会を提案するのは身が引けた。 仕方がない、明日にするか。 「俺もう部屋戻るよ」 「は?泊まってけよ」 「やだよ。今日できることもうないし、休めるうちに休んどけ」 「んー…それもそうだな」 光もようやく片付いたのか思い切り背伸びをしている。座って作業するとなんでこんなに身体が凝り固まってしまうような感覚に襲われるのはなぜなのか。 時間を見ればギリギリ日付を跨ぐ前。 順調、順調。 ケイちゃんも寝てるだろうし、親衛隊交流会の話も全部明日だ。 風紀への依頼も。 「じゃ、おやすみー」 「おー」 ぐったりと机に突っ伏す光を見て、つい笑ってしまう。あんなに嫌がっていた生徒会長だが、責任感あるせいでなんやかんやと頑張ってしまう光。 近いうちに労わってやろうと考えながら、生徒会棟から帰宅した。 ****** 「では、親衛隊会議をはじめたいと思います」 時は放課後。 昼休みでは足りないだろうと判断し、親衛隊会議を放課後へずらしてもらった。参加率上々。各隊長は参加してるし、副隊長もまぁまぁの参加率。不在のとこは代わりをつれてきているし、親衛隊もだいぶいい方向を向いている気がする。 「まずは、先週あった制裁の件についてです。生徒会長親衛隊の手引きによるものでしたが、なにか弁解がありますか?生徒会長親衛隊長」 ちなみに司会はケイちゃんで、俺は書記に回る。理由は察してくれ。 指名された生徒会長親衛隊隊長が起立する。制裁、って言葉が出た瞬間に「うわ、やっぱ出たよ…」って顔してたのに今は申し訳なさそうな顔で取り繕っている。演技上手だね。 「はい、この度はご迷惑をおかけしました。新しく入ったばかりの親衛隊のものが手引きしていて、把握出来なかった僕の責任だと思っています。弁解はありません」 「今回、第一発見者が生徒会長様でした。自分の親衛対象であるお忙しい会長様の手を煩わせたこと、しっかり自覚して改善を早急に行ってください」 「…はい、すみませんでした」 ケイちゃんの辛辣な言葉が効いたようで、うつむいたまま着席する。 本当に頼むよ。 俺の今年の目標、制裁撲滅だから。 先週一件のみで済んだ制裁。 被害者も未遂で、まぁよかった。メンタルフォローは風紀に担当してもらってるし、こないだ廊下で楽しそうにしゃべってるの見たからうまくいったのだろう。もちろんフォローは続けてもらうけど。 「制裁は減少し、先週は一件で済ましたが、お忙しい生徒会のみなさまの手を煩わせたことに変わりはありません。今学期の交流会は難しいと考えておいてください」 ざわつく会議室。 まぁそうだよね。交流会が心の支えだったしね、親衛隊。 前期は制裁はあったけど、減少は目を見張るものだったからご褒美として交流会を設けさせてもらったけれど、今学期はまじで厳しい。 制裁関係なく、生徒会の忙しさで。 「統括に質問があります!」 はいっ!と元気よく挙手。 ハキハキと告げられた挙手理由に、ケイちゃんは快くどうぞと手を差し伸べた。 その目は、間違いなく書記である俺に向けられていた。 「生徒会長親衛隊副隊長の加藤です。親衛隊統括隊長である神宮寺くんに質問です」 ケイちゃんは、統括全体に対しての質問だと思っていたらしく少し戸惑いながら俺を見た。さっきまでの厳かな雰囲気どこいったのってくらい可愛い目が俺を見る。 可愛いなー。いや、もうまずこの空間可愛いしかいないけどね。俺を除いて。 「はい、どーぞ」 困っているケイちゃんの代わりに俺が答える。まぁ俺に質問だしね。 そんな態度すら気に入らないのか、加藤と名乗る少年はキッと俺を睨みつけながら言葉を発した。 「っ、親衛隊では統括の規則により抜け駆けを禁止されています。神宮寺くんの生徒会長の部屋に入り浸る行為は規則に反しないんですか!」 僕達に厳しくルールを設けさせといて自分はちゃっかり抜け駆けしてんじゃねーぞ、と。 なるほど。 てかこれ生徒会長親衛隊隊長からの質問だろ。さっき謝ったばかりだから気まずくて副隊長に頼ったな? 「反しません」 「っ…!何故ですか」 「親衛隊統括はそのようなルールは設けていません。生徒会長親衛隊および他の親衛隊でもそのようなルールがあるとすれば、それは各隊のルールです。統括には反映されません」 「なっ」 「そもそも統括から各隊に強いているルールは制裁禁止と親衛対象であるかたに迷惑をかけないという2つのみです。そのルール自体にに文句があるなら各隊長に掛け合って下さい」 「だったら!」 まだ食い下がるか。 抜け駆け禁止は昔から各親衛隊にあるルールだ。隊長たちは今更それを覆すことはしないだろう。なぜなら、自分たちもそれで過ごしてきたから。 嫌な悪習だね。 「生徒会長様が疲れているのに、部屋に押しかけるという行為は迷惑行為になるのではないですか!?」 あー、こないだの広報。 カメコ先輩ではないだろう。たぶん1年生が出した記事だ。証拠も何も無いパパラッチ。 信じてる人もいるんだなぁ、いるよなぁそりゃという思いで加藤くんを見た。息は荒く、怒っているようだ。 「ならないって分かってて聞いてるでしょ?」 「っ…!」 「時間の無駄です。座ってください」 悔しそうに唇を噛み締める。 あー、好きなんだな光のこと。 可愛い顔が真っ赤になっていた。嫉妬と怒りで、冷静にもなれない可愛い人達だよホント。 「隊長、副隊長の皆様ならお分かりでしょうが、俺と生徒会長は友人の立場です。仲良くしていることを快く思っていない人達は多いと思います。特に生徒会長親衛隊の方たちは」 特に特に親衛隊隊長は。 「そのことについては、いらない嫉妬を買ってしまった俺にも責任があるとは思っています。今まで自由にやってきた親衛隊が統括という立場によってルールを敷かれるのも気に食わない人たちもいるでしょう」 しかし、しかしだ。 「でも冷静に現実を見つめてみてください。ルールを設けてなにが変わりました?忙しい生徒会のみなさまに迷惑がかからないように、制裁も禁止してなにも変わっていない?そんなことないでしょう?」 自覚しているはずだ、そろそろ。 「前期の生徒会の誰かが、親衛隊にありがとうなんて言ったのを見たことがありますか?」 生徒会メンバーからの嫌悪の目。 それが当たり前だった親衛隊。 しかし、生徒会補佐として仕事を手伝うようになって、着実に生徒会と親衛隊との溝は浅くなっている。固定概念が消えず、親衛隊を毛嫌いしている人たちもたしかにいる。 でも、その関係ない人達の見方すら今は変わってきているはずだ。 伊達に1年の時から企ててないよ。 親衛隊統括なんていう面倒臭いことこの上ない組織なんか。 「親衛隊というのは、そもそも親衛対象を護るためにあります。護るというのは色恋沙汰からではありません。せっかく頼ってくれるようになってきたんだから、このまま良好な関係を築いていきましょうよ」 入学したときに見た、生徒会の親衛隊を侮蔑したような目。あれは衝撃的だった。 非王道が好きな俺には悲しい現実だった。 二度と、そんな目で見させない。 親衛隊と親衛対象がくっついてもいいじゃないか。 親衛隊だからという理由で、嫌われ者になんかなってほしくない。 「交流会はイベントが多すぎて多忙な生徒会のみなさまに申し訳ないので、今学期はありません」 しかし、と続く言葉にぴくりと皆の耳が反応する。 「イベント補佐として親衛隊の仕事が増えました。各親衛隊、親衛対象の指揮の元、お手伝いをすることになりました」 ぴくぴくっ、とまたしても皆の耳が反応する。 「体育祭だけではなく、今学期すべてのイベントのお手伝いです。スケジュールは後で配布します」 さらに、と言葉を続ければ俯いていた顔がばっと一斉にあがった。 「ハロウィーンのダンスは親衛隊優先で、各親衛対象のダンス相手として踊ることが出来まーす!」 「「「っっ、!!!」」」 やったぁぁぁあああ!!! ガタガタと椅子が倒れ、会議室はお祭り騒ぎ。抱き合うものもいれば、泣き出すものもいる。 そんな光景を満足気に見渡し、とりあえず皆が落ち着くのを待ちながらケイちゃんに今後のスケジュールを配ってもらった。 いやぁ、光に交渉した甲斐があったなぁ。こんなに喜んでもらえるとは。 ちなみにこのムチアメ作戦、度々やっている。一学期は秘蔵ブロマイドを配らせて頂いた。 じゃないとね、さすがにね、統括のいうことなんて誰も聞いてくれないしね。 「みなさまお忘れなきよう。親衛隊と親衛対象がお付き合いできる可能性がゼロでないことは、我らがケイちゃんが示してくれました。存分に生徒会の皆様のお役に立ち、生徒会の皆様に好印象を植え付けていきましょー!」 「っ、テルくん!!!」 そんなケイちゃんの怒号も、親衛隊の歓声にかき消される。 そうそう、せっかくみんな可愛いんだからさ、可愛さと健気さアピールしていこうよ。 そんなこんなで親衛隊会議は終了。 さっそく明日から親衛隊は仕事に駆り出されるわけだけど、親衛対象と一緒に過ごせるから全然苦じゃないし、むしろご褒美だし。 生徒会や親衛対象からすれば人手が増えて助かるのウィンウィン関係だ。 これで俺も現場駆り出されなくて済む。 ***** 「テールくん、ケーイちゃん!親衛隊なに騒いでるのー?」 会議は終了のち解散。 今から各親衛隊ごとに集まって、今発表された内容を伝えるはずだから、またどこぞで歓声があがるはずだろう。 会議室の外まで漏れ出ていたらしい歓声に興味を持ったのか、秋人が駆け寄ってきた。 「親衛隊にご褒美あげてきたとこ」 「ご褒美?」 首を傾げる秋人に、ケイちゃんが説明。その間に会議室の施錠を済まして、ついでに光宛のメッセージを送っておく。 ふんふんと興味津々にケイちゃんの話を聞いている秋人は、絶賛助っ人中だったらしく、陸上部の服を着ながら右手にテニスラケット、左手にはグローブをはめていた。 「アキ、明日からちょっと騒がしくなるから聞き耳立てといてくれない?」 「わかったー。でも親衛隊が手伝うようになるなら、大人しくなるんじゃないの?」 「生徒会の親衛隊はね。他の親衛隊が隙をついてくる可能性も無きにしも非ず」 「りょーかい、トモにも言っとく」 「さんきゅ。てか今日だけで3つ掛け持ちしてんの?忙しいね」 「今日はねー」 陸上部のエースたちと競って競争心を煽り、テニス部の1年生たちに技術指導をし、野球部の球投げ機械として駆り出されている、とのこと。 スポーツ万能通り越してない…? じゃ、野球部いってくるねーと慌ただしく去っていった秋人を見送り、ケイちゃん共に生徒会室へ向かった。
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