猫の趣味のはなし

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猫の趣味のはなし

いつものように、帰省という名のさつき充電期間はあっという間に終わる。 外出もせず家に引きこもってさつきの実験に付き合ったり、ゲームしたりしてただけなのに本当にあっという間だった。 いつものことながら、孝宏には遠慮してもらって2人で過ごした。 毎度アッシーしてるのに、そんな扱いだからそりゃ不満も大きいのだろう。迎えにきた孝宏はそれはそれは不機嫌そうな顔をしていた。 「…すっかり元気になったようでなにより」 あと嫉妬。 「私はいつだって元気よ」 何言ってるの?と不敵な笑みを浮かべるさつきに、孝宏も苦笑い。激弱なところ見せときながら、こんなこと言えちゃうんだから本当図太い。 こういうさつきが好きだから、俺としては嬉しい限り。弱って、甘えたなさつきも好きだけど、泣いてる顔はあんまり見たくない。 結局落ち込んでいたのは初日だけで、次の日からは普通だった。かといって、あいつに言われたことを聞くこともなかった。思い出させるのも嫌だし。 今回は実験メインだったなー、寿命延ばす薬とかもはやメカじゃないじゃんねー。この週末を振り返りつつ、整えた身支度の最終確認のため鏡に向き合う。 うん、ばっちり可愛い親衛隊だ。 「戻るだけなのに、毎回めかしこむよなぁ。こっち帰ってくる時は適当なのに」 「言ってなかった?俺いま学園の偉い人の仕事手伝ってんの」 ちなみに俺もぼちぼち偉い人にのし上がってんの。 そう言えば疑わしそうな視線を感じた。意外ってか。 帰ったら恐らくまた光が溜め込んだ仕事の片付けから始まるんだよ…。あと親衛隊からの報告受けなきゃ。 「じゃ、俺学校戻るね。また再来週帰ってくるから」 「えぇ、また電話して」 「はーい」 ちゅっ、とさつきの鼻先に口づけをし別れを告げる。 ごねたりはしなかった。うっすら笑みさえ浮かべていた。 うん、大丈夫そう。 「俺の前でそういうのやめてくれる?」 「孝宏もやれば?」 「あほか。それだけじゃ済まねぇわ」 「うっわ、お前まじでさつきに近づくなよ。さつきも近づかないように気をつけてね。けだものだよ、危ないよ」 「分かったわ」 「いや、分かるなよ…冗談だろ」 勘弁してくれ、と頭を抱える孝宏にさつきも笑っている。私も冗談よ、なんて言いながら孝宏の頭撫でてる。そういうの俺が見てないところでやってくれませんかね、いや見てないところでやられても嫌だけど。 ジェラシーな視線を感じたのか、満更でもない顔で頭を撫でられていた孝宏と目が合った。 「……」 「……」 無言で勝ち誇った顔された。 「早くエンジンかけてくださーい!」 このままじゃ帰りつくの深夜になってしまいますよー!さらに往復する孝之はド深夜になりますよー!いいんですかー!いいんですねー! さすがにそこまでは叫ばないけど、単純にムカついたのでエンジーン!とご近所さんまで届くように叫んだ。 近所なんてないけど。 ここら一体あいつの土地だけど。 それに対してもまたクスクス笑っているさつきは、俺たち男のジェラシーなんて一切分かっていないんだろう。 孝宏がハイハイと面倒くさそうに車のエンジンを付けに行く。その隙に、さつきへ抱きつきに行く。 「さつき、文化祭では何見たい?」 今度こそ見に来ると言うなら、今年度もはりきっちゃうぜ! そんな調子で尋ねれば迷うことなく女装が見たいと答えられた。 「去年見れなかったから、今年こそ可愛いテル見たいわ」 「おまかせ!」 嫌な顔なんてするわけがない。 どうせ去年意気揚々と女装喫茶を掲げて、張り切った女装姿を学生たちにはさらしているのだ。おかげさまで女装癖があるなんて噂も流されているらしいけど、それならそれで利用するに越したことはない。 今度こそお別れのキスを頬にして、うるさくクラクションを鳴らす車へ走る。 笑顔で手を振るさつきを、見えなくなるまで鏡越しに目に焼き付けた。 ****** 「テルくん、おっかえりー」 消灯時間も過ぎ、部屋にたどり着けばソファでくつろぐケイちゃんに迎えられる。ルームウェアで、前髪あげてるケイちゃん可愛い。 目の保養ばっかで、いっそ涙が出そうだ。 「ただいまー。親衛隊は変わりなかった?」 「特に報告はきてないよ。新藤も休み中呼び出しなかったし、風紀の見回りもスムーズに行ってたみたい」 「そう。なら良かった」 どうやらしっかり統括の仕事もしていてくれていたようで、情報もわざわざ聞きに行かずに済んだ。できる副隊長で助かる。 「生徒会はなにか聞いてる?」 「んー、受注が何個かあったくらいかな。生徒会の皆様も休めてたみたい」 「なるほど、ってことは週末はケイちゃんお泊まりしてたってことね」 「…そのニヤニヤしたテルくん好きじゃないから今すぐ引っ込めて」 図星だったようで、睨まれてしまった。 詮索は野暮だろう。 ケイちゃんをからかうのはやめて、携帯の電源をいれる。外泊中は完全オフにしていた。さつきとの時間を邪魔されないために。 毎度のことだから、回りは大体分かってくれている。実際生徒会でも風紀でもない俺がいないと成り立たないことなんてないのだ。あったら、それは最優先の改善事項となる。 親衛隊統括なんてものに就任したからといって、責任どうのこうの言われる筋合いはないと思っている。俺は俺でやれることはしっかりやってるつもりだし、俺にそんな責任が降り掛かってしまえば、ケイちゃんに被害がいってしまう。 そもそも親衛隊関連の問題は俺が管理すべきものではあるが、責任自体は各親衛隊にある。 風紀は元々知らん。今も協力してるのは新藤が風紀に入る時の条件だし、責任なんかない。特に親衛隊関連以外のものは。 親衛隊統括は、特別親衛隊に厳しく、生徒会を優先させるわけではない。親衛隊に入ったからといって、その行動を縛られるのは明らかに不利益だし、じゃあ親衛隊に入らない方が自由にできるじゃーんと思われても困るので生徒会や各親衛対象からは俺が統括する代わりにご褒美なるものをいただいている。 これを確立させるのに、すごい時間がかかってしまった。電源の入った携帯に着信もメールもきていないのを確認して、そのシステムがしっかり機能していることを実感する。 これで来年の統括引き継ぎも安泰であろう。 携帯はしまい込み、制服の上から羽織れる上着を部屋に取りに行く。カメコ先輩が勘違いした際に着ていた大きめの上着だ。 フードを被ってしまえば、顔が隠れるという大変便利なものだ。ちなみに光に買ってもらった。 「ケイちゃん、俺ちょっと会長のとこ行ってくるねー」 「はーい。無理しないでね!」 「ありがと。いってきます」 こんな時間になにしに?なんて聞かれない。 毎回仕事手伝いにって答えてたら、いつからか聞かれなくなった。 変わらずまったりと寛ぐケイちゃんに手をふり、早足で寮の廊下を歩いた。 仕事がないに越したことはないが、あるならあるで早めに片付けたい。月曜の朝から寝不足登校なんかしたくない。 思いは切実である。 あんなにダラダラ過ごした休日とうってかわって、学園に戻れば大忙しだ。それもこれも身から出た錆だから仕方ないけど。 「っ!」 暗がりの談話室に気配を感じて、反射的に足を止めた。ついでに気配も潜める。 消灯時間もすぎて、人通りが極端に少なくなったこの時間。歩いているとしたら、見回り担当の風紀か、深夜徘徊を目論む不良生徒だろうが、今回は違う。 気配は談話室にある。こっそり忍び寄り覗き込めば、談話室にいる2人を確認した。 当然2人とも男。 ボソボソと、小さな声で会話しているのが分かる。 そして俺は、この声を知っている。 「見回りこないよね…?」 「さっきそこ通ったばっかだし大丈夫だろ。そんなキョロキョロしてないでコッチ向けって…」 名古屋冬真くんと、結城なつくんです!!! 本当にありがとうございます!!!! 小声で話しているから仕方ないけど2人とも囁くように近距離、暗闇で会話してる!MK5なのか、なにがどうしてそうなったのか分からないけど、壁ドンしている! 冬真くんが!なつ君に!! 思わず興奮して、息が荒くなる。 なにを隠そう、俺にとって今激推しのカップルなのだ。 ケイちゃんたちみたいに、くっつけようとして、くっついた訳じゃない天然もの。しかもお互いノンケなのに、両思いになれた貴重もの。 俺の目の保養。 2人とも付き合ってるのを隠しているのに、すっごいナチュラルにイチャつくから気づいてる人は気づいてる。 「とうま…」 「なつ…」 ドキドキの瞬間だ。 お互い同室者がいるから、忍んでこの場所にきたのだろう。風紀に見つかるかもしれないというリスクをおかして。 そんなことしなくても休日一緒にいたくせに、離れたくないんだよね、明日からまた付き合ってないふりしなきゃいけないから今のうちイチャつきたいんだよね!!わかる!わかるよ!! 興奮をおさえつつ、目は見開き、マジでキスする5秒前、カウントダウンしながらガン見した。 「………」 フレンチなキスかよ!!!! 尊い!!! ちょっとだけ触れた唇は、まだ足りなさそうに、再び距離を縮めていく。 大興奮の俺。 違う意味で興奮中のふたり。 それを邪魔したのは、先程電源をいれたばかりの俺の携帯電話でした。 チャラランチャララン、と雰囲気に似つかわしくない着信音が廊下に響く。 「だ、誰だ!?」 冬真くんがなつ君を庇うように、こちらを睨んだ。 慌てて着信とったし、間違って通話ボタン押しちゃったし。良い雰囲気だったのにぶち壊しにした電話の主にも、サイレントモードにしてなかった俺にも腹が立つ。 とりあえず。 「今から行くから待ってて…」 それだけ言って電話は切った。 姿を現さないと怖がらせるだけだと思い、ふたりにフードもとって姿を見せた。 「神宮寺…」 「邪魔してごめんねぇ。でも規則違反はダメだよねぇ」 えへっ、と笑ってみせる。 神宮寺輝という名前は、一般の生徒からしたら警戒対象でしかない。なんせ親衛隊でないにも関わらず、親衛隊を差し置いて統括という立場で生徒会に媚を売っている人間だ。 気に入らないやつは生徒会に頼んで退学にさせているという根も葉もない噂も流れている。 そうしたのは俺だけど。 一目置いてもらうためにわざと噂流したんだけど。 当然、冬真くんは睨み警戒をみせる。規則違反という言葉にも敏感に反応した。 「そんな怖い顔しないでよー。名古屋冬真くんと、結城なつ君」 「っ、名前…」 「いやいやー、なんでそっちだけが名前知ってると思ってんのぉ?」 ご推しのふたりだから知ってるだけです。さすがに全校生徒の名前は把握してないよ。 「まぁ、悪いことにはしないから、そんな怖い顔引っ込めてよ。こわいなぁ」 一般の生徒なので、当然猫は被る。親衛隊統括というキャラは崩しちゃダメ。 でも、この2人を威圧するというこの状況がもう心苦しくて仕方がない。 ってことで、さっさと助け舟を求めて電話した。 「あ、もしもし新藤?」 風紀の新藤くんです。 規則違反で通報?いやいやまさかそんな真似しないって。 ていうか、俺がイチオシふたりにそんなことするわけがないって。 そんな本心をふたりが知るはずもなく、さらに身を強ばらせるふたり。安心させるように、ふたりにもしっかり聞こえるように新藤に伝えた。 「僕今から会長様のとこ行くからぁ、新藤はケイちゃんと一緒にいてくれる?あんな記事出されたし、ひとり寮に置いとくのは心配で…。あ、大丈夫?じゃあついでに明日の荷物ももってケイちゃんと一緒に登校してよ。うん、うん、はーい!ありがとねっ!おやすみー」 ピッと通話を切り、ふたりを見据える。 ちなみに、電話先の新藤は猫被った俺に対して「はぁ?」しか言ってなかった。大丈夫もなんもない。でも伝えたからには新藤は俺らの部屋に行くはず。 律儀に明日の準備までして。 「たしかぁ、結城くんの同室者って新藤だったよね?」 「っ、は、はい!」 「…そう。間違ってなくて良かった。じゃあ今聞いて貰ったとおり、新藤は今日泊まりで朝も直接学校行くから、結城くん今日は1人部屋だね」 緊張して返事するなつ君かわいいね? 本当なら、ここでイチャついている姿を直接この目で見たかった。 雰囲気ぶち壊してしまったお詫びにもならないかもしれないけど、どうか今夜は存分にイチャイチャしてくださいよ。 「こんなとこでイチャついてないで、風紀に見つからないうちに2人ともお部屋戻ってね」 バイバイ、とフードを再度かぶり、素早く撤退する。 これで冬真くんはなつ君の部屋にお泊まりするだろう。そして存分にイチャイチャするだろう。 嬉しい反面見れなかったことが悔しく、光の部屋に入って早々に文句を言ってやった。 ****** 「昨日はなんだったんだ?」 ケイの朝飯食えたから別にいいけどさー、と翌朝新藤に言われた。 伝えたとおりに、ケイちゃんのとこへ行ってくれたようでなにより。 「僕もびっくりしたよ、なんも聞いてないし」 「ごめんごめん、ケイちゃんに連絡すんのすっかり忘れてたー」 生徒会棟からの直登校。 朝っぱらから嫌な視線を浴びつつ教室に入れば、律儀な新藤くんがケイちゃんの護衛といわんばかりに俺の席に座っていた。頼れる男だ。 1年の頃は同じクラスだった新藤、相良、遠藤も2年に上がれば別々のクラスだ。たまに昼休みにそのメンツで集まることはあるが、通常は各々の友人同士で過ごしている。 から、新藤がうちのクラスにいるのは珍しい。 そのせいかクラスの数人が色めきたっている。 次期風紀委員長とうたわれる新藤くん、なんと顔もよいのだ。真面目だし、優しい。 「ありがとね、新藤。助かっちゃった」 「うわ、キモ」 「えぇー、もうっ!失礼だなぁ」 そして正直者である。 バッシン!と強めにその背中を叩きつつ、一般生徒の前だから仕方ねぇだろうが、はよ席からどけやというメッセージを視線のみで伝えて新藤を席から退かした。 なんと空気も読めるのである。 完璧だね、新藤。 「ってか、昨日部屋出る時に結城と名古屋に鉢合わせたから察してるんだけどな。お前まじでくだらねぇことに付き合わせんなよ」 「くだらなくないよ、昨日の僕と君は愛のヒーローさ」 「意味わからん…」 はぁ、と呆れ顔でため息をついた新藤は、どうでもよさそうな声でとんでもねぇことを言い出した。 「なんなら部屋交換、してもいいんだけど?」 「やめて」 話おわりっ!帰って! 即座に反対し、その背中を押して教室から追い出す。分かってて言ってんだコイツ、まじ性格悪い。 そりゃ、同室になったら冬真くんもなつくんも嬉しいかもしれないけどさ、俺が2人の逢瀬に立ち会う機会がパッタリ減ってしまうだろ!ただでさえ少ないのに!!ばかめ!ほんとばか! 「名古屋の同室アキだしなぁ」 「早く帰って!もう二度としません!ごめんなさいっ!」 そんな俺に満足したのか、はっはっはっ!と高笑いしながら、自分の教室へ戻っていく新藤の背中を見送る。俺の目は据わっていたと思う。 モブ友人どもは、俺に対して優しさを持ち合わせていない。分かっていることだが、腹立たしい。 新藤へ白旗をあげてしまった自分の不甲斐なさに落ち込みながら、ざわつく教室へ戻る。クラスの視線の先は俺である。 新藤は親衛隊統括に謝らせるという偉業をこの場でやってしまったのだ。そりゃ、みなさま内容が気になるんでしょう。 「テルくん、もう先生くるよ」 「…はーい」 ケイちゃんはまじで興味がないのだろう。たぶんいつものことだ、みたいな感覚で。 そうこうしてるうちに担任が登壇しホームルームが始まる。 二学期ははじまったばかり。 体育祭に文化祭。ハロウィーンパーティにクリスマスパーティ。 全寮制ということもあって、うちの学校は催し物が多い方だ。 その分生徒会の仕事も多いし、親衛隊への受注も増える。それに伴い俺の睡眠時間も減る。 暦上は秋だというのに燦々と照りつける太陽が、容赦なく気温をあげていく。サボることも許されなければ、授業中の居眠りも許されない。 かといって、教師の授業は退屈でちっとも頭に入ってこず。 目を開けたまま意識を飛ばし、ノートはまっさらなまま授業時間は過ぎていく。 「次の時間は、体育祭の出場種目を決める。各々考えておくように」 そんな担任の言葉でハッと意識を戻した。 終業のベルも知らぬ間に鳴っていたようで、再び教室内は騒がしさを取り戻している。前の席に座るケイちゃんはというと、暑さのせいかぐったりと机に突っ伏していた。 「……」 ふむ。 改めて本日の時間割を確認すると、まぁ見事にサボる隙間がない。 えぇ、まじか。 こんなに心は外に行きたいと嘆いているのになんたる拷問。 人間として暮らして、日々、人間は大変だと思い知る。 「ケイちゃんー」 「んー、なーにー?」 「次体育祭の種目決めるんだってさ。なに出るの?」 「綱引きー」 そんな種目はありません。 運動得意じゃないケイちゃんにとって、次の時間も憂鬱で仕方がないようだ。だらけている姿も可愛いけれど、なにも出ないわけにはいかないだろう。 かといって、選手選抜に選ばれることもないから、楽そうだけど。 「綱引き、種目にこっそり追加しとけばよかったね」 「ホントだよー、玉入れとかがいぃー」 「俺的にはチアしてほしいけどなぁ」 「やだー」 あら残念。 まぁ、応援団という名のチアリーディングには親衛隊のかわい子ちゃんたちがこぞって参加するんだろう。それはそれで見物だ。 ケイちゃんチアリーダーなら最強そうなのにな。 「テルくんがやったほうがいーよー」 「俺は当日親衛隊動かすからねぇ」 まぁなんせいつ何時も人が足りないので、何でも屋の親衛隊も当日お仕事がある。生徒会補佐という親衛隊大喜びのお仕事が。 ちなみに今年からの導入です。 「じゃあ親衛隊統括の仕事するから体育祭出ない」 「…俺も全部不参加なわけじゃないからね?」 「…がんばります」 しぶしぶと意気込みをみせるケイちゃんの頭をよしよしと撫でる。ここまでケイちゃんを嫌がらせるとは体育祭もなかなかやるな。 いつもなにごとも全力で頑張ります精神のケイちゃん。 一緒に頑張ろうね、と小さくエールを送った。 結局、全員参加のクラス別リレーや徒競走、プラス2人して障害物競走と借り物競争への参加が決まった。 危うく学年別リレー選手に選ばれそうになったが、親衛隊統括の名を使い断固拒否。足速いのはとっくにバレてしまっている。が、可愛い親衛隊が足早くてもねぇ…。 ぶっちゃけ俺の目指すところではない。 この学校のいいところは、生徒に主体性があるところ。種目はスムーズに決まっていく。足早い人は早い人なりにちゃんと立候補するし、遅い人は遅い人で自分に合った種目に立候補する。 風紀に属しているものは自分の仕事ができる範囲内で種目を選ぶし、いやぁ基本賢い生徒たちだなぁ。 ほんと、噂話とかはろくでもねぇのに。 そんなことを思いながらニコニコと過ごしていた矢先だった。 「神宮寺くんは、応援団団長に決まっているので、神宮寺くんと他応援団立候補者は放課後体育館にあつまってください」 「………へ?」 クラス委員長が当然のように最後そう言い放ち、種目決めは終了した。
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