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うああ。暑い。
いくら冬だってフルフェイスのヘルメットは蒸れる。
そのくせ身体は冷えきっている。
「疲れた……」
呟いて、俺は左手に巻き付いたベルトを外し、ぽいっと放り投げる。
やべ、壊したら俺クビだわ。
焦ったけど、壊れてないのを確認して、目をそらした。
ちらりと周りを見回してみる。
目の前で着替えていたブルーは早くも着替えを終え、携帯をかちかち弄っている。現代っ子め。
イエローは紫煙を燻らせながらエロ本に目を落としたままだ。ちなみにデブではない。
今この場所で俺と会話しようとするものはいない。俺一応レッドなのに。なめられてる?
「そ、そんなことないですっ」
抹茶色の全身タイツを身に纏った奴が言う。誰だこいつ。
「グ、グリーンですけど」
ふうん。5人組だったんだな俺ら。知らなかった。
「………」
ブルーがニヤニヤしてる。イラっときた。
そんなとき、控え室のドアがノックされた。
「あの、みんな着替え終わった?」
おずおずといった体に、可憐な声がかかる。
間違いない。これは別室で着替えていたピンクだ。
俺は迷いなくドアを開ける。
命懸けの、割に合わない仕事をしている俺の、唯一の癒し。
ピンクは差し入れのコーヒーが載った盆を少し掲げ、にっこりと蠱惑的に微笑んだ。
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